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日本OSS貢献者賞2005の授賞式
鵜飼文敏氏
高橋浩和氏
高林哲氏
まつもとゆきひろ氏
 日本OSS推進フォーラムと独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は8月23日,「日本OSS貢献者賞2005」の受賞者を決定した。第一回目となる今回は,鵜飼文敏氏,高橋浩和氏,高林哲氏,まつもとゆきひろ氏の4名が受賞した。

 日本OSS推進フォーラムはオープンソース・ソフトウエアの普及を促進する官民の団体。IPAが事務局を務める。「日本OSS貢献者賞は,日中韓の3国が共同で開催した『北東アジアOSS推進フォーラム』での,共同での人材育成という合意に基づいて創設された」(IPA 理事長 藤原武平太氏)。日本OSS貢献者賞の受賞者は,2005年秋に中国で開催する予定の第4回北東アジアOSS推進フォーラムで,中国および韓国が実施した表彰制度の受賞者と共に表彰される予定である。

 審査委員長を務めた慶応義塾大学教授 徳田英幸氏は「受賞した4人以外にも多くの候補があり,選考には苦慮した。来年以降もこの賞が継続していくことを希望している」と述べた。「オープンソースの強みは多くの人が同じ土俵で開発に携われること。まだまだ多くのオープンソースに貢献した方々がいる」(日本OSS推進フォーラム 代表幹事 桑原洋氏)

 鵜飼文敏氏は,ボランティア・ベースのLinuxディストリビューションDebian Projectの開発者であり,また数多くのオープンソース・プロジェクトの企画と運営を行っている。受賞スピーチで鵜飼氏は「Debian JP Projectでは,日本語化したDebianディストリビューションを作成していたが,日本語化パッチが国内のみで普及し,Debian本体のパッケージにマージされない状況に陥っていた。そのため,日本語パッケージの廃止を決断した。一時は混乱もあったが,英語の壁を乗り越え,日本語パッケージ作成者が皆で本体のメンテナ(開発者)になることでDebian本体を国際化することができた」と,世界に出て行くことの重要さを語った。

 高橋浩和氏はNFSの高速化やメモリー・マイグレーションなどのLinuxカーネルの改良プロジェクトを主導している。高橋氏は「カーネルの開発をしていて,日本語で議論できる相手がほとんどいない」と,カーネル開発への参加を呼びかけた。カーネル開発者になるために必要なものとして「コミュニケーション力,センスと技術力だけでなくフルタイムに開発に時間を割けるようお金と時間も必要」と訴えた。

 高林哲氏は,Namazu, quickml, gonzuiなどのオープンソース・ソフトウエアを開発。高林氏は「オープンソースの開発は貢献と言われるが,自分の体験上,貢献よりもリターンの方が大きい。技術が向上するだけでなく,自分を売り込み,他の開発者とのネットワークを作ることができる」とオープンソース活動のメリットを語った。また大学は研究成果をもっとオープンソース・ソフトウエアとして出していくべき,と指摘した。「大学では論文を出すことが目的で,プログラムは簡単なプロトタイプを作って終わり。プログラミングは低級な仕事という風潮がある。しかし,もう少し作り込めば世の中にそのまま役立つものになる。論文では20~30年後に世の中に影響を与えることができるかもしれないが,オープンソース・ソフトウエアとして出すことですぐにインパクトを与えることができる」(高林氏)

 まつもとゆきひろ氏は世界的に普及しているオブジェクト指向スクリプト言語Rubyを開発。まつもと氏は「日本だけでも数千,世界では数万のオープンソース・プロジェクトがあり,Rubyはそのうちの一つにすぎない」と述べた。そして「ただ,Rubyで開発したソフトウエアのディレクトリは英語が必須になっており,そのため,Rubyでプログラムを作成し,世界で使われるプログラムが出てきた。それらを作った人に世界にデビューするきっかけを作ることになった。そういったことが,貢献と言えるかもしれない」と語った。

 まつもと氏は「地獄と極楽には共にご馳走の大皿と長い箸があるという仏教の法話がある。箸が長いため自分で自分の口に食べ物を入れることができず,地獄では誰も食べ物を食べられない。だが極楽では互いの口に食べ物を入れてやることで食べることができるという。オープンソースとして,コードを共有することで互いに与え合うという道を選びたい」とオープンソースに対する希望を表明した。

(高橋 信頼=IT Pro)