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写真 NTTの和田紀夫社長
写真 NTTの和田紀夫社長
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 今回のKDDIと東京電力の提携交渉の焦点とされた光ファイバの扱いを巡り,NTTグループが新たな動きを打ち出し始めている。

KDDIの“いいとこ取り”に強い不快感

 9月15日,NTT持ち株会社の和田紀夫社長がKDDI・東電の提携交渉が明らかになってから初となる社長会見に登場した(写真)。KDDIと東京電力の交渉について質問が及ぶと,和田社長は「KDDIが有利な契約で東電の光ファイバを使い,公定レートの我々の光ファイバも使う“いいとこ取り”をするなら現行ルールの前提が崩れる」と不満を表明。「相手の出方次第では,光ファイバの開放義務見直しの“要求手法”を変えるかもしれない」とけん制した。

 それほどNTTグループにとって,光ファイバは今後の飯の種となっている。2004年11月に発表した中期経営戦略では,「2010年に光を3000万回線」,「メタルの固定電話網から光のIP電話への移行計画を2010年までに示す」とぶち上げた。その一方で,固定電話と携帯電話を連携させるFMC(fixed mobile convergence)サービスの開発にグループを挙げて当たっている。FMCが実現した際には,光ファイバが固定電話の足回りとして重要な位置を占める。

 こうした中,KDDIと東電の提携が明るみとなった。

 現時点で提携交渉の最終形は明らかになっていないが,延長数万kmの光ファイバを持つパワードコムがKDDIに合併されることになれば,そのインパクトは非常に大きい。KDDIは携帯電話事業を保有しており,FMCサービスの推進にも積極的だ。

 さらに交渉次第では,東京電力が首都圏に保有する光ファイバもKDDIが優先的に利用できるようになるかもしれない。光インフラを保有する会社をKDDIと東京電力が共同で作るという選択肢もあるだろう。東京電力の電柱を利用して,光ファイバを新たに敷設し始める可能性もある。

KDDIの交渉で強まるNTTの要求

 つまりKDDIの東京電力との提携は,NTTグループにとってライバルの競争力強化という脅威に映る。神経を尖らせるのも無理はない。和田社長が「光ファイバの開放義務見直しの“要求手法”を変える」と切り出したのは,こうした事情があるからだ。

 和田社長を始めとしてNTTグループは,かねてから光ファイバの開放義務撤廃を要求している。光ファイバの開放義務とは,電話のメタル回線や光ファイバを合わせたアクセス回線で高いシェアを持つNTT東西地域会社に課されているもの。(1)サービス抜きで光ファイバ単独での提供,(2)貸し出し料金のメニュー化,(3)自社と同条件での提供−−などを義務付けられている。この結果,東西NTTが自社ユーザーに安価な光サービスを提供するため,他社にも月額約5000円という料金で光ファイバを提供せざるを得なくなっている。

 その一方で,NTTグループには「光ファイバは民営化後に自力で引いたもの」との思いがある。コストをかけた光ファイバに,東京電力などと同様に「自社で自由に値付けをしたい」(NTT地域会社幹部)のだ。

 ただし東西NTTの規制緩和について総務省は,「法律に定めている通り,アクセス回線のシェアを5割以下に抑えるしかない」(総合通信基盤局料金サービス課の谷脇康彦課長)との前提を掲げている。東西NTTのアクセス回線のシェアは9割以上あるため,現時点で規制が外れる可能性は極めて低い。これ以外には法制度の改正を求めるなどの手段が考えられうるが,大きな労力が必要となりそうだ。

 これとは別に,「電力系の光ファイバに同様の開放義務を課す」ことも裏腹で難しい。こちらも電力系のメタル線も含めたアクセス回線のシェアが5割を超えるか,法制度の改正が必要となる。つまり現時点では,NTTグループの開放義務撤廃の要求がすんなりと通る状況にはない。

 しかし光ファイバをトリガーに通信業界が大きく動いていることも事実である。

 総務省は2005年春から,NTTや電力系通信事業者以外の通信事業者が光ファイバを引きやすくする政策を打ち出している。米国ではCATVとのバランスで地域電話会社の光ファイバの開放義務を撤廃している。国内でもCATV統括大手のジュピターテレコムが株式上場を機に,家庭向けアクセス回線で積極策に出ている。

 将来,NTT以外の事業者がアクセス回線の展開に積極的に取り組み,競争環境に大きな変化が起こると,総務省が従来の判断を改める可能性もある。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション

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