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写真1●東京スター銀行 ヴァイスプレジデント ITグループ システム企画チームリーダー 岩渕重人氏
写真1●東京スター銀行 ヴァイスプレジデント ITグループ システム企画チームリーダー 岩渕重人氏
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写真2●パネル・ディスカッション「Linux導入成功のポイント」
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 11月8日,日経Linux主催による事例研究セミナー「IT投資 成功の方程式」が開催された。東京スター銀行や富士通,日立製作所,早稲田大学,日本IBM,ノベル,米SpikeSourceがLinuxやオープンソース・ソフトウエアの事例などを講演した。

「新しいことをやりたい会社にとってオープンソースは武器」

 基調講演に登壇した東京スター銀行 ヴァイスプレジデント ITグループ システム企画チームリーダー 岩渕重人氏は「常識を覆せ! 東京スター銀行の新たな挑戦」と題して講演した。

 同行では,2002年に稼働した「営業社員インセンティブ集計システム」で,Linux,Apache,Tomcatを採用したのを皮切りに「ローン債権管理サブシステム」,イントラネットのポータル・サイト「StarGate」,タッド・バッジCEOのBlog,社内業務のパフォーマンスを可視化するシステム「B3 Smart」でオープンソース・ソフトウエアを採用。StarGateではポータル・サイト構築ツールのJetSpeed,コンテンツ管理システムのOpenCMS,タッド・バッジCEOのBlogではLinux,PHP,MySQL,「B3 Smart」も,Windowsサーバー上でPHPとPostgreSQLを利用している。

 注意点として岩渕氏は「運用管理は他のOSと変わず,Linuxだからやらなくて済む作業はない。またLinuxに精通した技術者が少ないという問題はある」と指摘した。

 岩渕氏は「オープンソースがすべてのケースでBESTではない」としながらも「東京スター銀行ではリバース・モーゲージやノンリコース・ローンなど先進的な商品を投入してきた。商用ソフトは機能が豊富でベンダーがサポートを提供してくれる。しかしオープンソースはすぐにダウンロードして試してみることができ,シンプルで中身が見える。新しいことをやりたい会社にとっては武器になる」と結んだ(関連記事「岩渕氏インタビュー」)。

金融,EC,BtoB,教育機関

 富士通 プラットフォームソリューションセンター プロダクトソリューション技術部 プロダクト課長 押川智浩氏は,PRIMERGY Linuxインストール・モデルは2004年度,前年に比べ34%販売台数が増加したと紹介。2003年度は自治体向けが増加したが,2004年度は特に情報産業や金融業向けが増加したという。

 東京三菱銀行では,数十台あった店舗サーバーを2台のLinuxサーバーに集約した。丸善は同社の書籍販売サイト「丸善インターネットショッピング」を2005年3月にリニューアルしたが,このサーバーにはLinuxが利用されている。キリンビジネスシステムズでは,メインフレームで稼働していた「キリンビールEDIシステム」をLinuxに移行した。同社のシステム構築基盤TORIOLEを利用している。

 また早稲田大学 メディアネットワークセンターマネージャー 久保田学氏は,早稲田大学の大学事務システムについて講演した。このシステムにはNECが技術協力を提供している。

 早稲田大学では,ポータル・サーバー,学習支援,入試,財務,学費,人事,研究支援,履修などさまざまな基幹システムをPostgreSQL,PHP,Linuxで構築している。構築したアプリケーションは「大学事務システムWISDOMU/U」として無償で配布している。

 科目履修申請システムでは2003年の稼働直後,アクセスが集中して利用を中止した苦い経験もあったが,テスト徹底などの対策を行い,現在は全学で利用している(関連記事)。

金融機関での世界最大の拠点Linuxサーバー

 日本IBM 先進システム事業部Linux事業推進部長 山本明厚氏も様々なLinuxシステム事例を紹介。日本生命保険では営業支援システムのWebキャッシュ・サーバーとしてLinuxを2000台導入しているが「金融機関での世界最大の拠点サーバー」(山本氏)という。

 また那覇空港で免税店を運営するDFS GALLERIA沖縄では2005年5月にLinux POSシステムが稼働。ある外資系証券会社ではリスク・マネージメント・システムでUNIXサーバーをLinuxへ移行。高エネルギー加速器研究機構では57.3TFLOPSの演算性能を持つ「Blue Gene」を導入。またある証券会社では1日260万アクセスの処理を想定したシステムにLinuxを導入。WebSphere Application Serverを採用し,WebサーバーおよびWebアプリケーション・サーバーを合わせて2004年当初21台だったが,現在数百台に拡大しているという。

 ライブドア証券では,為替ニュース配信にLinuxを採用。ネットプライスではDB2が稼働するOpenPower上のLinuxを導入している。損害保険ジャパンでは,Oracle9i RACによるクラスタリング構成のDBサーバーでLinuxを利用。また千葉銀行ではデータ・ウエアハウスにDB2などを搭載したメインフレームzSeries 990を使用している。高砂熱学工業もzSerise Linuxのユーザーであり,14台のPCサーバーをで稼働していたLotus Notes/DominoサーバーをzSeriesに集約した。NTTデータも信金統合Webバンキング・システムでzSerise Linuxを利用,「約200台ぶんのアプリケーションをメインフレーム数台に集約した」という。

 日立製作所 プラットフォームソリューション事業部Linuxビジネス推進センタ長 山田重己氏は,ゼンリンデータコムの住宅地図ネット配信サービス「ZNET TOWN」でのLinux採用事例を紹介した。ZNET TOWNでは,月間4000万ビューを月間1億6000万ページ・ビューにする計画を立てており,そのためにLinuxを搭載したブレードサーバー「BladeSymphony」を採用した。これまで30数台のサーバーを使用していたが,68ブレードとSANに統合,運用性や耐障害性が向上したという。

 また徳島県立中央病院では,県内の各医療機関が保有する診療情報や医療資源を共有するシステムにLinuxを採用している。

 ノベル Linuxソリューショングループ シニアマネージャ山崎正広氏は,ユミルリンクの企業向けホスティング・サービスにSUSE Linuxを採用した事例を紹介した。1日500万件のメール配信に対応したシステムであり,SUSE Linuxが標準でファイル・システムReiserFSを採用していることが採用の理由だったという。また米QualcommでCDMAチップ設計のシミュレーションにLinux使用している。

 さらに「IBMメインフレームzSeriesのLinuxはSUSE LinuxベースのzLinuxが標準」(山崎氏)であり,日本IBMも紹介したNTTデータでもSUSE Linuxべースという。

 また米SpikeSource副社長 Joaquin Ruiz氏は,Dresdner Kleinwort Wassersteinが同社のサービスを利用している事例などを紹介した。SpikeSourceはオープンソースの多数のミドルウエアなどの統合テストを行い,検証済みのバージョンの組み合わせを提供するサービスを行っている。日本ではシーイーシーがSpiekeSourceの代理店となりサービスを販売している。

課題は技術と人材の不足,ベンダーはサポートで選ぶ

 講演者らによるパネル・ディスカッションも行われた。「Linux導入成功のポイント」と題されたディスカッションでは,会場の参加者のアンケート集計結果を交えて議論が進行した。聴講者がLinuxの最大のメリットとしてあげたのはコストではなく「ベンダー依存からの脱却」。Linux導入にあたっての不安や課題としては「技術力,人材不足」が63%と圧倒的多数を占めた。「実績不足」という回答は16%,「機能・性能不足」という回答は12%だった。

 ベンダーを選ぶ基準としても64%が「技術力やサポート・サービス」をあげた。「機能や性能」が9%,「導入実績」が18%であり,「コスト」をあげた回答者は9%に過ぎなかった。