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 科学技術振興機構(JST)と産業技術総合研究所(産総研)の研究チームは2005年11月17日,半導体を使わない新型ダイオード(スピントルクダイオード)を開発したと発表した。同チームが発見した「スピン注入磁気共鳴」という現象にダイオードとしての効果があることが分かり,それを応用した。現行の半導体ダイオードに比べ,マイクロ波領域で周波数選択的かつ高効率なダイオード効果を示すのが特徴。小型で低コストに製造できる上,今後の技術開発次第では,出力面でも勝る可能性があるという。

 スピン注入磁気共鳴は,金属と絶縁体からなるトンネル磁気抵抗素子(TMR素子)などに特定周波数のマイクロ波を与えると発生する現象である。素子内には磁極の向きが回転可能な「フリー層」があり,素子に電流を流すと,振り子のように一定の周期で磁極の向きが振動する。そして素子にこの周期(マイクロ波相当)に一致した交流電流を流すと,一種の共鳴が起こり磁極の振動が大きくなる。これが,スピン注入磁気共鳴である。

 この現象が生じているとき,ある向きの電流が流れている場合は,フリー層と固定層(素子内の磁極の向きが一定の層)の磁極の向きが一致して電気抵抗が小さく,その逆向きの電流が流れている場合は,2つの層の磁極の向きが異なり電気抵抗が大きくなることが分かった。これは電流の向きによって電圧差が生じることを意味し,時間的平均を取ると正負どちらかの電圧が得られる。つまりマイクロ波から直流電圧を取り出せるわけで,ダイオード効果があると言える。これが今回発見されたスピントルクダイオード効果である。スピントルクダイオードは,仕組み上,特定周波数に選択的に働く。そのため,雑音に強い検波素子としての活用が期待される。

 研究チームには,JSTと産総研のほか大阪大学基礎工学部とキヤノンアネルバも参加。研究成果は,2005年11月17日付の英国科学誌「Nature」に発表される。