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 「いまこそビジョンが大切で、ビジョンを描くリーダーが必要だ。そして、リーダーシップは天性のものではない。学んで習得できる」。一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎教授は、聴衆であるCIO(最高情報責任者)らに訴えた。

 米倉教授が語ったのは、調査会社ガートナー ジャパンのCIO向けイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2005」でのこと。ユーザー部門や経営層の意見を集約しIT化の方向性を打ち出す立場にあるCIOに向けて、約1時間熱弁を振るった。

 米倉教授はリーダーがビジョンを創り出すときの考え方として「期待のコーディネーション」を説く。一般的に、近年価値観の個人差が大きくなるなか統一的なビジョンを打ち出すのは難しいと言われるようになった。しかし「こっちに新しいものがありそうだ」、「こっちに進むとより良くなりそうだ」というみんなが期待している方向性をうまく集約することで、共有し得るビジョンを生みやすくなるという。

 またカリスマとリーダーの違いについても指摘した。カリスマのある人がトップに立つと、そのカリスマに付いていきたい人しかその組織には寄ってこない。リーダーはカリスマとは異なり、「この問題についてみんなで一緒に解決しよう」と呼びかける。すると、多様なスキルを持ったモチベーションの高い人材が集まる。「オレ、困っているんだけど一緒にやらないか、とみんなに呼びかけることができるリーダーがいま求められているし、普通の人だからこそ良いリーダー役が務まる」(米倉教授)。

 続いて米倉教授が強調したのが、リーダーシップは学習できる能力であること。「腕立てや腹筋と同じように鍛えれば身に付く。決して先天的なものではない」(米倉教授)。リーダーに必要な能力は四つ。(1)メンバーに仕事の意味を説く「ビジョン構築能力」、(2)メンバーに努力や改善の目標をきちんと教えられる「明確な数値目標設定能力」、(3)「目標達成のための組織設計能力」、(4)「モチベーションを高める制度設計能力」、である。

ビジョンのないITはいらない

 米倉教授は日本のIT業界、あるいは日本に必要なリーダーシップの象徴的な話題として、情報家電を取り上げる。IT業界に対して「情報家電の可能性を追求せよ」と訴えた。「情報家電と言っても、冷蔵庫にレシピを送信する、といった貧しい発想は止めてほしい」(米倉教授)。家電同士を結んでネットワーク経由で消費電力を調整し、省電力を実現するようなソリューションが求められると例示した。「アジアの貧困な国を救ったり、環境問題を解決したりといった、高いビジョンに基づいた発想が必要。そうしたビジョンを打ち出すリーダーシップが、日本には欠けている」と続ける。

 また人間の可能性についても強調した。例えばサプライチェーン管理では特定の商品を早く効率的に供給するという目的で終わるが、人間が介在することでより柔軟に対応できる。「例えば、顧客が求める17インチのディスプレイを取り寄せるのに時間がかかるとわかるや否や、発想を変えてすぐに手に入る20インチのディスプレイを安めに売り、顧客との長期的な関係作りを狙う。こんな発想は、人間だからこそできること。システム作りには、単に効率うんぬんを追求するだけでなく、人間の発想を支えるという考え方が必要ではないか」(米倉教授)。