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 「ベンダー企業の経営、ユーザー企業の動き、技術の進展などさまざまな変化が、基幹系システムの分野を大きく変えている。だから我々は基幹系システムの分野を、新しい視点や考え方でとらえる必要がある」。調査会社ガートナー ジャパンのアナリスト、亦賀忠明エンタープライズインフラストラクチャ担当バイスプレジデントはこう語る。亦賀氏は同社のCIO向けイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2005」で、サーバー市場全体の動きを解説しつつ、次世代の基幹系システムに求められる要件や考え方を整理した。亦賀氏の発言の主旨は次の通り。

 米IBMはシェアを拡大しつつある。仮に1000万円以上のシステムを基幹系サーバーとした場合、ガートナーの調査では1999年に33%だったIBMの市場シェアが、2004年には49%に上昇している。市場全体の規模は縮小傾向にあるが、IBMの売上の絶対額は下がっていない。そう考えると、IBMによる占有が始まっていると見たほうがよい。

 2004年の世界のメインフレーム市場は7%伸びた。実は、売上を伸ばしているのはIBMだけで、他のベンダーは減少している。2004年におけるIBMの世界メインフレーム市場のシェアは75%にのぼる。IBMは2000年以降、LinuxをメインフレームのOSに位置づけるなどオープン化戦略を推し進めた。IBMと他ベンダーのこうした戦略の差が、市場のデータに大きく表れた。

 IBMのシェア拡大は、他のベンダー、特に国産ベンダーが戦略を転換するきっかけになっている。実際、国産ベンダーはメインフレームの“次”の事業に着手しており、インテルのプロセサ「Itanium」を搭載したサーバー製品を戦略の中心に据えようとしている。今後、メインフレーム事業を見る際には、IBMとそれ以外で明確に分けて考える必要がある。

 一方、従来から指摘されてきたメインフレームやオープン系サーバーそれぞれの利点・欠点は、技術革新や工夫でリカバー可能になりつつある。こうした事情から、「メインフレーム対オープン系」という対立軸はもはや意味をなさなくなっている。

今後の基幹系システムのあり方を明確に打ち出すべき

 ベンダーのサーバー製品戦略には、ほかにもさまざまな外部要因が絡んできている。例えば、ユーザー企業からのコスト削減圧力、SOA(サービス指向アーキテクチャ)など新しいテクノロジーの登場が代表的なものだ。こうした外部要因を踏まえつつ、可用性や信頼性が高いメインフレームと、選択性やコスト・パフォーマンスの良さを持つオープン系サーバーの良さを持ち合わせた、新しい基幹系システムの考え方が求められている。

 そうした市場全体の動きを見据えた上で、ベンダーは今後の基幹系システムのあり方をユーザー企業に積極的に打ち出していく必要がある。ガートナーではそれを「新基幹系システム」と呼ぶ。

 新基幹系システムのポイントはいくつかあるが、一つがオープン系技術を中心に据えたうえで「垂直統合型」のシステム体系にすること。アプリケーション、ミドルウエア、OS、ハードウエアの最適な組み合わせを提示する。重要なのは、現場のSEがインテグレーション作業で最適化するのではなく、ベンダーが出荷する時点で最適化させることである。

 もう一つが、明確にメニュー化すること。メインフレームでは基本機能として組み込まれているトランザクションやバッチ、大量印刷といった機能をシステムの標準機能として打ち出す。それだけでなく、運用管理環境、開発環境、旧システムからの移行支援プログラムまでも含める。これらの部分を「インテグレーション作業で作りこむ」あるいは「個別のサービスとして対応する」などと言ってごまかしてはいけない。また信頼性の要件としては、情報システムがこれだけ社会に入り込んでいる以上、基幹系と銘打つのであれば99.9999%以上の稼働率が必要だ。

 すでに大手ベンダーからは、新基幹系システムの考え方を具現化したサーバー製品やシステム製品が出始めている。例えばNECの「シグマグリッド」、日本IBMの「System z9」、日立製作所の「BladeSymphony」、富士通の「PRIMEQUEST」などだ。それぞれ、ベンダーが提示する製品の特徴は異なるし、濃淡がある。例えばミッション・クリティカル領域にSOAを適用することを明確に言及しているベンダーはIBMだけだ。

 新基幹系システムの登場で、日本ではなかなか進んでいないレガシー・マイグレーション(参考記事)やサーバー統合(参考記事)はより合理的に、着実に進むだろう。そして新基幹系システムは次のシステム・インフラとして発展するはずだ。