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 「通信の巨人」米AT&Tを“子”である米SBCコミュニケーションズがのみ込む---。1984年の旧AT&Tの分割で生まれたSBCコミュニケーションズが,苦境に陥っていた“親”であるAT&Tを買収するというビッグ・ニュースで2005年の通信業界は幕を開けた。


会見する和田紀夫NTT社長
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 競争が進んだ通信先進国である米国での異変に危機感を募らせたNTT持ち株会社の和田紀夫社長は,2月の講演で「非常に大きなショック」と言及。2004年11月に発表した中期経営計画で掲げた(1)2010年までに3000万世帯のアクセス回線を光ファイバ化する,(2)フルIP化した次世代基幹網を構築する---という2大目標を達成するための布陣として,グループ中核5社のうちNTT東日本とNTTコミュニケーションズの社長交代を6月下旬に断行。さらに,2005年11月に発表した経営計画では,フルIP化する次世代基幹網をNTT東西地域会社とNTTドコモ・グループが構築する計画を明らかにした。

 この計画に真っ先にかみついたのがKDDI。小野寺正社長は「NTT分割に逆行する」と批判の声を上げた。当のKDDIは,懸案だった東京電力との提携にこぎ着け,2006年1月1日付で東京電力子会社のパワードコムを統合。好調なau携帯電話事業と比べて苦戦が続いていた固定系通信事業で,光ファイバ回線の安定的な確保にめどを付けた。NTTグループに先行して2007年度末までに固定電話網のフルIP化を完了させ,並行して固定通信と移動通信の設備・サービスを融合させる「FMC」(fixed mobile convergence)の実現に向け,大きく歩を進めた格好だ。


携帯参入に向け総務省に免許申請したソフトバンクの孫正義社長。「今は受験生のような立場」。(撮影:小林 伸)
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 “悲願”を達成したのは,ソフトバンク・グループも同じ。2004年7月に固定通信の日本テレコムをグループに統合して業界3位に浮上したものの,成長分野である移動通信事業はのどから手が出るほど欲しかった。孫正義社長は無線周波数の割り当て方針を巡り,2004年後半から総務省に“あの手この手”の揺さぶりをかけた。11月9日,くしくもNTTの経営計画発表と同じ日,総務省は12年ぶりに携帯電話事業への新規参入に門戸を開いた。新規参入が認められたのは,ソフトバンク・グループのBBモバイルのほか,ADSL大手のイー・アクセス子会社であるイー・モバイル,高速無線データ通信に特化したサービスを予定するアイピーモバイルの計3社である。NTTグループ,KDDIと同様に,ソフトバンクもイー・アクセスも,FMCの実現に向けスタートラインに立ったことになる。

 携帯電話3位のボーダフォンは,4月1日付で津田志郎会長,ウィリアム・モロー社長の新体制へ移行。以降,メール,パケット通信,家族通話,指定相手先通話の計4種類の定額サービスを立て続けに繰り出し,2005年1月から始まった契約数の純減を5カ月でくい止めた。グローバル企業である同社にとっては“規格外”である「おサイフケータイ」も11月に投入。「グローバル企業のローカル市場での最適化」という難題に,解決の糸口を見いだしたようだ。同様に契約数が伸び悩んでいたウィルコムは,1月1日付で就任した八剱洋一郎社長の下,2月に旧DDIポケットから社名を変更するとともに,定額の高速パケット・サービスや通話定額サービスを投入。1998年7月に記録した契約数の記録を7年半ぶりに塗り替える復調ぶりを見せている。


TBSとの統合提案の真意を,改めて語る楽天の三木谷社長
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 既存の通信事業者が事業の再構築にまい進する一方で,“ネット出身”の新興勢力の動きが目立ったのも2005年の特徴だ。まず,光ファイバ・サービス上で無料の動画コンテンツ配信サービス「GyaO」(ギャオ)を始めたUSEN。4月のサービス開始から瞬く間に登録会員数を増やし,8カ月弱で500万登録を獲得。広告収入によるビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスの事業性を,大手通信事業者に先駆けて立証してみせた。フジテレビの主導権確保を狙ったライブドアによるニッポン放送株取得,楽天によるTBS(東京放送)への経営統合提案も,インターネットと放送の融合サービスを目指す動きとして,広く社会の注目を集めた。

 株式取得によってインターネットと放送の連携・融合を推し進めようというライブドアや楽天の手法は,「放送電波」という既得権の大きさから腰が重かった民放各社のネット活用に火を付けた。広告代理店なども巻き込んで,「通信と放送の融合」へ向けた取り組みを一気に本格化させることになった。VODサービスに加えて,「ポッド・キャスティング」方式の映像番組配信,携帯電話向け地上デジタル放送「ワンセグ」,さらに地上デジタル放送のIP再送信の解禁などをにらんで,新旧勢力が入り乱れて通信,インターネット,放送の連携・融合を推し進める構図になっている。