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 「昨年の講演ではSkypeが面白いと言ったが,今年は使えないという話をします」。ITの総合展「NET&COM2006」の講演でこう切り出したのは,NTTデータ 法人ビジネス事業本部ネットワーク企画ビジネスユニット長の松田次博氏。常識が1年で変わるネットワーク環境の激変を聴衆に印象づけ,ユーザーの目線で冷静にネットワーク機器やサービス価値を見極める必要性を訴えた。

 松田氏は,企業が取り組むべき課題として挙げたのは三つ。(1)徹底したネットワーク・リストラ,(2)高度利用への挑戦,(3)ネットワークの見える化だ。

 (1)は松田氏が一貫して主張してきた,費用対効果の最大化への追求。「専用線とブランドだけにとらわれない機器・サービス選定を」という昨年の主張に加えて,今回の講演では「差別化ルーティング」を提唱した。基幹系と情報系のネットワークを分け,主に情報系のネットワークにベストエフォート型のADSLや光アクセス・サービスを適用。メリハリをつけることで費用対効果を高める手法を披露した。「主役はキャリアでもベンダーでもシステム・インテグレータでもない。ユーザーが主導権を取るべきだ。インテグレータの役目はユーザーの選択と主張のサポート」と,会場のユーザーに発破をかけた。

 また企業ユーザーが知っておくべき知識として,光ファイバの重要性を改めて力説。「NTTの局舎から半径3km以内で70%,5kmで95%のユーザーをFTTHでカバーできる。この地の利を生かすべく,日本は光ファイバに90%のリソースを投入すべきだ。モバイルは10%で十分」とした。KDDIとソフトバンクが光アクセス回線の東西NTTからの分離を総務省主催の懇談会で訴えた件(関連記事)についても言及。「KDDIとソフトバンクの訴えは理解できる。光ファイバは国民の共有財産。NTTは全国5000の局舎を生かしてFTTHを実現して欲しい」とコメントした。

 (2)の高度利用とは,固定通信と移動通信の融合させるFMC(fixed mobile convergence)の先取り。松田氏が推したのは,IP-PBXと無線LAN搭載のデュアル携帯端末またはPHSとの組み合わせによる自営IPセントレックス,いわゆる「モバイル・セントレックス」だ。

 IP電話の導入形態としては,キャリアのIP-PBXを利用してボックスレスによるコスト削減をねらうIPセントレックスを推してきた松田氏だが,FMCの先取りでは事情が異なると説明。「初期投資のいらないIPセントレックスを薦めていた。今はユーザーに応じて両方を薦めている。自営IPセントレックスの良さは,自社でIP-PBXとキャリアを選べること。薦めるわけではないが,Asteriskなどの無償製品もある。何千万もするIP-PBXを導入する価値はない」と,企業におけるFMCの費用対効果の最大化のカギが自営IPセントレックスとなる理由を示した。

 自営FMCにおけるエンド・ユーザーのメリットとして挙げたのは,ワンナンバーによる利便性,インスタント・メッセージなど多様なコミュニケーション手段の使い分け,そしてWindowsアプリとの連携など。「ウィルコムのW-ZERO3はすぐに試したが便利。長文のメールを入力するならキーボードは必須だ。Windowsアプリケーションとの連携も容易」と端末について自らの試用感を語った場面もあった。

 続いてユーザーの選択肢となる携帯端末の無線技術にも言及。「FMCの先駆者である英ブリティッシュ・テレコムはBluetoothを使っている。日本ではPHSが広く使われている。無線LANか,Bluetoothか,それともPHSか,といった問いに対する答えは今のところ出ていない」とした。

 ここで松田氏は,PHSの現状に話を切り替え,キャリアは携帯端末の無線技術の選択肢を狭めない施策をすべきと主張した。PHSを提供する通信事業者がウィルコムだけである点を指摘。「無線LANが使える携帯電話機があるにもかかわらず,構内PHSを導入する企業ユーザーは今でも存在する。回線交換だけに音質は折り紙付きだ。ウィルコム以外のキャリアも考え直すべきではないか」と,PHSの現状に疑問を投げかけた。

 最後の(3)見える化は,ネットワーク上のアプリケーションやコンテンツの利用状況を集計して業務に利用するアプローチ。遠藤功氏の書籍「見える化」を通じて知ったという松田氏は,ネットワークにおいても見える化が効果的と指摘。「ユーザーに見る気がなくても,見せたい情報が“見える”ようにする工夫が大事」とした。

 見える化に関連して語ったのが「ワークスタイルの変革」というキャッチ・フレーズに対する私見だ。まずソフトフォンのSkypeについて,松田氏が主催する情報化研究会で実施したアンケート調査の結果を例示。「約1000人を対象にSkypeの利用状況に関するアンケートをメールで送り,20数名の返信を得た。返信率の低さがSkypeそのものに興味がないことを示している。企業の1割に導入されるが,それ以上はないというのが今の認識」とした。次にコラボレーションやフリーアドレスについて「必要なのは企業内の一部の人。ワークスタイルの変革をうたう専門家の口からはIP電話やプレゼンス,フリーアドレスなんて言葉は出てこない。IP電話導入のためにワークスタイルを変革する,という手段と目的の逆転が起きているのが現状」と苦言を呈した。