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 マイクロソフトが2006年7月に,ライセンスのバージョンアップ権である「ソフトウエア・アシュアランス(SA)」の価格を3割強引き上げることが明らかになった。2006年1月からリセラー経由などでユーザー企業に伝え始めている。マイクロソフトのビジネス&マーケティング担当執行役常務のAdam Taylor氏は「SAは2006年3月に特典が大幅に拡充する。7月の価格改定はこれに対応したもの。6月までは現行の価格で販売する」と語っているが,突然の知らせに困惑する企業も少なくないようだ。

 SAは2001年に,それまで複数存在した「バージョンアップ・ライセンス」を廃止して,企業向けのライセンス制度に導入した制度である。製品をバージョンアップしたいユーザーは,ソフトの購入契約時に「ライセンス(L)」と呼ぶ新規購入価格に加えて,SA価格を上乗せする必要がある。SAの契約期間中は追加料金無しでバージョンアップできるほか,電話サポートなどの特典が提供される。

 現行のSA価格(1年当たり)は,サーバー製品で「L」価格の19%,Officeなどのデスクトップ製品で同22%である。これが7月1日以降は,サーバー製品で「L」の約25%,デスクトップ製品で同29%になる。全社契約のエンタープライズ・アグリーメントの場合は「L」の価格が抑えられているため,「L」に対するSAの割合はもう少し高くなる(表1)。いずれの場合も現行のSA価格に比べて,3割強価格が上がる。

「特典の拡充が価格変更の理由」---マイクロソフト

 マイクロソフトのAdam Taylor執行役常務は「SAは2006年3月14日に特典が大幅に拡充する(関連記事)。SAの購入企業には24時間365日対応の電話/Webサポートを提供する。またWindows OS Upgrade(Windows OSをアップグレードするためのライセンス。OS本体はボリューム・ライセンスで販売していない)のSAを購入した企業には,『Windows Vista Enterprise』(セキュリティ機能が強化されたバージョンのWindows Vista)を提供する。これらの特典に対するユーザーの反応は非常に良好である。7月の価格改定はこれらの特典拡充に対応したものであり,単なる値上げではない」と述べる。

 ただし,同じく特典が拡充される米国では,価格は変更されない。日本のSA価格は元々米国のSA価格より割安で,「L」に対する割合にすると6~7ポイント低かった。7月の価格改定は,日本でもSAが米国並みに認知されたと判断して,価格水準をそろえたと見るのが妥当であろう。Adam Taylor執行役常務は「ライセンスの価格政策は,各国の経済状況に合わせて変更している。SAを導入した2001年頃は日本の経済状況が非常に悪かったので,日本におけるSA価格を低く抑えた。現在は,日本の経済状況も,ソフトウエア販売に関する競合状況も変化している」と語っている。

EA契約企業はコスト削減の目算が外れる

 SAの価格改定で注意が必要なのは,Officeソフトをエンタープライズ・アグリーメント(EA)というまとめ購入契約で導入している企業だ。あるリセラーは「SA購入企業のほとんどは,SA購入が条件となるEAでOfficeを購入している企業。多くは6年単位で見積もりをして,その期間内にバージョンアップするなら,ライセンスを買い直すよりもEAを購入した方が割安になると判断して,EAを選択している」と語る。この「EAの方が割安になる」という目算が,価格改定で外れる場合があるのだ。

 具体例を,Officeを1000台分購入したときの1台当たりの推定小売価格で示そう。EAは3年単位で契約し,最初の3年間はOfficeの「L」の価格と3年分の「SA」の価格を支払う。この3年間の累計費用は6万4800円であり,同台数に適用される「SelectレベルA」でOfficeの「L」を購入した場合の5万1100円より高くなる。

 ただしEAでは,4年目以降はSAのみを購入すればよい。値上げ前の価格では,EA6年分の累計費用(L+6年分のSA)は9万3600円で,SelectレベルAでOfficeの「L」を2回(初回とアップグレード分)購入する10万2200円よりも安価になる。一方,7月以降の新価格だと,EA6年分の累計費用は11万700円と割高になる。現行価格でEAを契約中の企業も,3年間の初回契約終了後は新価格でSAを購入する必要がある。この場合もEA6年分の累計費用は10万2600円になり,依然として「L」2回分よりも高くなる。

 Adam Taylor執行役常務は「EAは3年契約であり,当社では6年を単位としてEAを契約したり,EAを推奨したりしたことはない」と語る。しかし上で述べたように,EA契約でコスト削減効果が見込めるのは,4年以上(最短で6年間)の長期契約を結んだ場合である。EA契約でコスト削減を見込んだユーザー企業は,当てが外れることになるだろう。もし,2006年にEAを契約するのであれば,2006年6月まで適用される現行価格で契約するのがコスト的に有利である。