NTTデータ、富士通、日本電気、日立製作所、構造計画研究所、東芝ソリューションの6社は4月12日、情報システムの開発をユーザー企業から受注する際の「業務システム仕様」について、標準的な記述方法や合意方法を共同検討する「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」を発足したと発表した。今後、参加各社のノウハウや事例を持ち寄ってベストプラクティス集を策定して公開し、普及活動を推進していく。
情報システムの開発時には、ユーザー企業と、提供側のソリューションプロバイダとの間で、仕様を合意する必要があるが、仕様を記述した文書が開発者の視点で作られたものが多く、ユーザー企業にとって理解しにくいのが実情。その結果、発注側と受注側の認識のズレが原因で、開発時に手戻りが発生するなどのトラブルが発生しやすい。
今回発足した発注者ビュー検討会では、「ユーザー企業の観点から理解しやすい仕様の記述方法を策定することで、現場で使えるベストプラクティスにする」(NTTデータの山下徹副社長)狙い。「操作画面を事前に作る」、「画面の流れに合わせて業務処理の流れを説明する」などの仕様合意時の各社の工夫を持ち寄り、ノウハウを体系化することを目指す。NTTデータの山下副社長は、「UMLなど開発者視点での標準化はあるが、発注者の視点で体系化する取り組みは世界にも例がない」と話す。
アプリケーションの機能要件が対象で、どのような技術や製品を使うかといった実装方法は対象外になる。具体的には、(1)システムの画面遷移・定義、(2)ビジネスプロセス、(3)データモデル、(4)業務ロジック)──の4つの分野それぞれについて、仕様の確認や合意に適した記述方法を策定する。
策定した記述方法は、ユーザー企業による評価・検証も実施する。今後、ユーザー団体のJUAS(情報システムユーザー協会)や、参加各社の個別のユーザー企業に協力を仰いでいく予定だ。テーマ別に順次検討に着手し、2006年10月をめどにユーザー企業の評価・検証を実施する。共同検討は2007年9月末まで完了し、策定したベストプラクティスを公開、普及を推進していく。将来的には標準化団体への提案も視野に入れている。
検討会では今後、6社以外のソリューションプロバイダ各社にも、検討会への参加や成果物の活用を呼びかけていく。NTTデータの山下副社長は「ユーザー企業が、どの会社が出した仕様も同じように理解できるようになるのが最大のメリット。できるだけ多くのSIerに活用してもらいたい」と話す。
【写真】左から、東芝ソリューションの遠藤直樹IT技術研究所所長、NECの寺尾実執行役員常務、NTTデータの山下徹副社長、富士通の平田宏通経営執行役常務、日立の中島純三執行役常務