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図1:遠くからでも目立つイケアの店舗カラーである青と黄色は、スウェーデンの国旗と同じ色使い
図1:遠くからでも目立つイケアの店舗カラーである青と黄色は、スウェーデンの国旗と同じ色使い
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図2:ルームセットの例。この部屋にある家具全部で9万5890円という
図2:ルームセットの例。この部屋にある家具全部で9万5890円という
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図3:物流センターの倉庫のような「セルフサービスエリア」。顧客はここから自分で商品をピックアップする
図3:物流センターの倉庫のような「セルフサービスエリア」。顧客はここから自分で商品をピックアップする
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 4月24日にオープンする、スウェーデンの大手家具販売会社イケアの日本店舗「IKEA船橋店」(写真1)。そのイケアのローコスト経営の秘密が明らかになった。

 開店を2週間後に控えた13日、イケアは千葉県にある船橋店を報道機関向けに公開した。自ら先頭に立って船橋店を説明して歩いたイケア・ジャパン(千葉県船橋市)のトミー・クルバーグ社長は、商品を1つひとつ手に取りながら、イケアの「安さ」を語った。

 イケアグループは昨年、148億ユーロを売り上げた世界最大級の家具販売店である。その成長を支えている最大の武器が商品の安さだ。全世界で低価格戦略を徹底しており、それを実現するためのローコストオペレーションに磨きをかけている。

 船橋店を見てみよう。店舗は入り口から、出口の手前にある32台のレジに向かって、一方通行の動線が作られている。顧客はこの順路に沿って、約4万方法メートルある巨大な店内を進むことになるが、順路の大半は「ルームセット」と呼ばれる70ものタイプの違うモデルルームで占められている。

 イケアは日本進出を決めてから、「数百軒の日本の住宅を訪問し、住人にインタビューを繰り返して、日本人が望む部屋を探ってきた。撮影した部屋の写真は数千枚に上る」(クルバーグ社長)。こうして、若い男性向けの部屋や収納を有効活用した部屋など、日本の住宅事情に合ったルームセットを多数用意した。

 イケアは各部屋で、この部屋を作るのに「全部で○万円」と表示している(写真2)。部屋作りに使っているイケアの商品は、例えばスツールが1脚490円、木製ハンガーが8個で490円、まな板が2枚で290円といった具合に、1つひとつが安いので、「部屋全体でもこの安さで作れます」とアピールしている。もちろん、これらの商品を単品でも購入できる。

 ところがである。展示されたそれらの商品を気に入ったとしても、在庫のほとんどはその場に置かれていない。これがイケアの特徴だ。顧客は店内のあちこちに置かれている「ショッピングリスト」の紙に、各商品に付いている札の番号を書き込んでいく必要がある。例えば「列12、棚04」といった具合だ。
 
 イケアは在庫の多くを、レジの手前に用意した巨大な倉庫のような場所に保管している。ここは「セルフサービスエリア」と呼ばれ、顧客は買い物の最後に、ここでメモしてきた商品を自分でピックアップする。これがイケアでの買い物方法である。

 セルフサービスエリアは、まさに物流センターの倉庫そのもの(写真3)。高い天井スレスレまで在庫が積まれている。この中から、先ほどメモした列と棚のアドレス番号を頼りに、顧客が自分の力で商品を探し出し、カートに積んでレジまで運んでいく。イケアは商品のピックアップを顧客自身にしてもらうことで店員の数を抑え、人件費を浮かしているのだ。その分を商品の安さで顧客に還元している。

 積まれている商品の形態にも、イケアの強いこだわりがある。大きな家具を含めたすべての商品が、平たいダンボール箱に納められている。イケアはこの梱包を「フラットパック」と呼び、顧客の持ち運びを容易にしている。

 フラットパックを採用することには、ほかに2つの理由がある。1つは、顧客がすぐに持ち帰れる状態を用意しながら、顧客自身に家具を組み立ててもらうことで、イケアが組み立てるコストをなくしていること。もう1つは、薄い直方体のダンボールで商品を包むことでスペースを極力節約し、一度に大量の商品を輸送したり棚に陳列できるようにしていることだ。「イケアのデザイナーは見た目はもちろんのこと、作りやすさや運びやすさ、並べやすさまで考慮して商品を設計している。こうして輸送費などを抑えている」(クルバーグ社長)

 イケアの商品は、港からコンテナのままセルフサービスエリアに運ばれ、ここで山積みにされる。1つひとつの商品を店内のあちこちの場所に品出しする必要がないから、ここでも人件費を抑えられてる。

イケア流の買い物に顧客がなじめるかに注目

 以上のように、イケアの買い物スタイルは日本人にはなじみが薄いものだ。いちいち商品の在りかをメモするのは面倒だし、巨大な倉庫のような場所から自分で商品を探すのも億劫だ。自分で重い家具をレジまで運ぶのも骨が折れる。

 地震が嫌いな人なら、高い棚が倒れてこないか心配になるだろう。価格が安い代償として、ピックアップや運搬の負担を顧客自身が負うのがいいのかどうかは意見が分かれるところだ。他国では受け入れられても、日本で受け入れられるかはまだ未知数である。

 イケアもその点を十分承知している。イケアは船橋店のオープンまでに600人の従業員をそろえ、特に最後のセルフサービスエリアに人員をあてて顧客のサポートにあたる。当面は人件費がかかっても、顧客がイケアの買い物スタイルに慣れるまで「教育」する必要があるだろう。

 地震については、阪神・淡路大震災のレベルに耐えられる日本独自の耐震構造をセルフサービスエリアに採用。万が一、棚が倒れても「顧客の通路とは反対側に倒れる設計になっている」(クルバーグ社長)という。