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 4月25日,インテルは企業向けデスクトップ・パソコンに搭載する基盤技術(プラットフォーム)の新ブランド「vPro(ヴィープロ)」を発表した(インテルのvPro関連サイトはこちら)。企業内利用での管理しやすさを目的に,デュアルコア・プロセサやチップセット,制御用ソフトなどを組み合わせたもので,これまでは「Averill(アベリル)」という開発コード名で知られていた(関連記事)。

 これに先立ち,インテルは一般消費者向けパソコンのプラットフォームにも「Viiv(ヴィーヴ)」というブランドを名付けている(関連記事)。パソコン・メーカーのようにユーザーと直接接点を持たないインテルがなぜ,ここまでブランディングに力を注ぐのか。その真意をインテルの吉田和正代表取締役共同社長に聞いた。(聞き手は浅見直樹=ITpro発行人)



インテルの吉田和正代表取締役共同社長
写真撮影:栗原克己

---パソコンに搭載するプラットフォームという“技術”にvProやViivといったブランド名を付ける狙いは何でしょうか。

 今や新しい技術が日々登場し,デジタル化,ネットワーク化され,社会のインフラや人々の生活に大きな影響を与え始めました。パソコンはいち早くネットワークを意識した製品へと進化しましたが,最近ではテレビやDVDプレイヤーといった様々なデジタル機器も標準化されたインタフェースを持ち,ネットワークにつながるようになりました。

 こうして様々な機器が互いに連携するようになると確かに便利になりますが,デジタル化やネットワーク化の進化についていけない消費者は混乱してしまうかもしれません。どの機器もインターネットに接続できる。音楽も聴けるし,テレビ番組やDVDも観られる。じゃあ,いったい自分にふさわしい機器はいったい何だろうか,と迷うわけです。テレビとDVDの組み合わせを買うのがいいのか,それともテレビ機能を持ったパソコンがいいのか,はたまたワンセグのチューナーがついた携帯電話でもいいのか,と。

 これだけ多機能化が進むと,技術にあまり詳しくないユーザーは,製品を選択することが難しくなってしまいます。高度な技術を扱う企業は,まずそうした現状を認識する必要があります。

 特にパソコンについて言えば,個々のプロセサの性能を高めることは大事ですが,それだけをユーザーにプロモーションしても駄目です。重要なのは,その高性能なプロセサと,ほかのコンポーネントを組み合わせることで,どんなことができるようになるか,ということなのです。

 つまり,その技術をどのように使ったら一番楽しいのか,効率が良くなるのか,生産性が上がるのか,という具合に,利用形態を意識して具体的なメリットをユーザーに訴えていく必要があります。そのための手段として当社が提示したのが,一般消費者向けのViivや,今回発表した企業向けのvProといったブランドなのです。

技術の寄せ集めではなく

 ViivやvProはプラットフォームですが,それは単なる技術のセットという意味ではありません。インテルはプラットフォームを,サービスやアプリケーションを届けるための基盤としてとらえています。

 当社はこれまでノート・パソコン用のプラットフォームとして「Centrino(セントリーノ)」を提供してきました。Centrino搭載パソコンが普及することで無線LANの裾野が広がり,アクセスポイントが増え,モバイル・コンピューティングという一つの市場ができました。ViivやvProもそれぞれ,新しい市場を創出するつもりで投入したブランドです。

---インテルはコンポーネント・ベンダーであり,エンドユーザーとの接点はありません。パソコン・メーカーを介して,つまり“ワンクッション”を置いてユーザーに技術を提供する立場にあるわけですが,それでもエンドユーザーに向けたブランディングは大事なのでしょうか。

 大事です。確かに,エンドユーザーが意識するのはパソコン・メーカーのブランドかもしれません。しかし,インテルのブランドも同時に目にすることで,エンドユーザーはそのパソコンの利用形態をイメージしやすくなります。

 「Viivを冠したパソコンはエンターテインメントを楽しむのに向いている」,「vProを冠したデスクトップ・パソコンは管理機能が優れている」という具合に,ユーザーはブランドを通じて利用形態やメリットが分かり,目的に合った製品を選択できるようになるわけです。

 一方,ViivやvProといったブランドの付いたプラットフォームは,正しく動作することをインテルが検証済みなので,メーカーが個々のコンポーネントを検証する必要がありません。つまり,プラットフォームのブランドは,パソコン・メーカーに安心感を与えるものでもあるわけです。

企業向けに2度目の挑戦

---企業ユーザーの場合,パソコンの購入時にブランドよりもコストが重視されるなど,一般消費者よりもブランドが浸透しにくいのではないでしょうか。

 結論から言うと,企業向けのパソコンだからこそ,ブランディングをしっかり展開したいという狙いがあります。企業向けのパソコンはとかく一番安いのがいい,といった選択をしがちです。しかしクライアントの運用管理という視点から考えると,十分な機能や信頼性を備えていることが大切です。企業のニーズを満たす機能を備えたパソコンである,ということをはっきり打ち出すうえで,ブランドは威力を発揮します。

 実は,vProはエンタープライズ市場に向けたブランディングの2度目のチャレンジなんです。最初のチャレンジは,Centrinoでした。実はCentrinoは最初,企業ユーザーを狙って打ち出したブランドで,消費者向けにブランドを展開したのはその後でした。

---新しい技術のブランド展開を“お仕着せ”と受けとめるユーザーやメディアもあると思います。例えばインテルがViivを発表したとき,メディアは「既存のプロセサでも十分実現できること」と懐疑的な見方を示しました。新しい技術の意図や狙いをうまく伝えないと,市場が顔を背けてしまうことにもなりかねません。

 おっしゃるとおりです。インテルの使命は,あくまでユーザーが必要とするチョイス(選択肢)を提供することだと考えています。ですから「別にViivでなくてもよい」と言うご意見があって然るべきだと思いますし,企業のクライアント・パソコンのプロセサはCeleronで十分,という声があることも事実です。

 しかし,時代の流れとして,家庭では音声や動画などいろいろなメディアをパソコンで扱いたというニーズが高まっていますし,企業では仕事の生産性を高めたいというニーズがあります。そうしたニーズに最新技術で応えて,技術の価値を認めていただくよう努力することもまた,インテルの使命です。

 これまではパソコンに新しい技術が導入されても,それがどんな技術なのか,どんなアプリケーションや利用形態を可能にするものか,といったことがユーザーに伝え切れていませんでした。パソコンのプロセサはCeleronでも十分,という声を頂戴する背景には,そうした問題があったと思います。インテルだけでなくパソコン・メーカーもこうした状況を気にしています。

 必ずしもすべてのパソコンにハイパフォーマンスのプラットフォームが必要ではないと思いますが,インテルには効率のいいプラットフォームを作り上げ,ユーザーに提供していく責任があります。そうやって価値を認めてもらうことが重要だと考えています。

「隗より始めよ」の精神で

---インテル自身が,社内にvProブランドのパソコンを導入し,どれだけメリットが出たかを示す必要があるのではないでしょうか。

 インテルでは現在,デュアルコア・プロセサを搭載したパソコンに切り替えている最中です。今後,vPro採用パソコンを導入したことでどんな効果が出たのかを公表できればと考えています。やはりインテル自身が新技術の導入効果を市場に示していかないと,特にユーザー企業のCIO(最高情報責任者)は納得しないと思いますから。

---クライアント・パソコンと違い,サーバーでは単なる用途やメリットだけでなく,様々な要件に基づいて製品選択が行われます。今後,サーバーのプラットフォーム技術にもブランドを付けるということは有り得えますか。

 vProというブランドは,ユーザーはもちろんですが,システム・インテグレーションやパソコン販売を手がけている企業の営業担当者やマーケティング担当者に向けたものでもあります。サーバーについてはまだ検討段階ですが,そもそもブランドを付けることの意味も含めて,現在調査しています。

---Viivのロゴは丸みがありますよね。それに,インテルの名刺が新しくなって,右上の角が丸くなりました。

 名刺だけでなく,インテルの会社のロゴも同時に新しくしました。丸みを帯びたデザインにすることで,インテルは変わったということを市場に分かりやすく説明しようという意図です。

 これまでのブランディングはバラバラだったという反省があります。社名のロゴと「Intel Inside」のロゴがマッチしていませんでしたし,プロセサの製品名のロゴにも統一感がありませんでした。ですから,一般消費者の中には,インテルは知っていてもプロセサやプラットフォームの名前は知らなかったり,プロセサ名は知っていてもそれがインテルの製品だと認識してもらえなかったり,という状態が続いていました。

 そこで今回は統一感を出すため,きめ細かい作業を行いました。インテルという社名をマスター・ブランドとして定め,それを中心にして,企業向けのvPro,一般消費者向けのViiv,そしてモバイル向けのCentrinoといった形でプラットフォームを位置づけ,それぞれのもとにプロセサを定めました。こうしたアプローチで,インテルという企業が提供する価値やインテル製品の安心感を訴えていこうと考えています。

 いずれにしても,ブランディングは時間のかかる作業です。何年もかかるでしょうが,地道にやっていくつもりです。