「(韓国では)開発コストに対するユーザーの要求が厳しく、人月当たりで平均が20ファンクションポイント(FP)以下だと利益は出ない」。こう語るのは、韓国でFPの普及を進めるFPユーザーグループ(KFPUG)のInsoo Hwang副会長。同氏はまた、韓国の大手ベンダーであるサムソンSDSのデリバリ・プロセス・チームを率いるマスター・テクニカル・エキスパートでもある。今回、日本ファンクションポイントユーザ会(JFPUG)の総会で講演するために来日した。
ファンクションポイントは、アプリケーションの機能量を測る指標であり、主に開発の規模を表す際に用いるもの。2005年にKFPUGが会員から集めた30プロジェクトのデータにおける開発生産性の平均値は、人月当たり19FP。20FPよりも低いが、徐々に生産性は高まっている。実際、KFPUGが集めた2004年のデータは人月当たり17FPだった。これらの数値はアプリケーションのFP値を全開発工程の工数で割った値。データを収集したプロジェクトの対象業務は、公共分野が40%、金融分野が27%、製造分野が20%などである。また、Insoo氏が所属するサムソンSDSでも「今年は人月当たり24FPだったが、来年は27FPを目指している」という。
一方、日本におけるFPによる生産性データとしては、昨年、ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)が収集し分析したものとして、1人時当たり0.118FPという値がある。211プロジェクトの中央値だ。同時にSECが収集した作業量は1カ月当たり165時間であり、これを使って換算すると人月当たり19FPになる。単純な比較はできないが、日本と韓国の開発生産性は近いと言っていいだろう。
韓国で生産性が求められる要因の一つとしてInsoo氏は「政府のプロジェクトで過当競争に陥っている。政府は安さだけを求めて“価値”を認識していない」と述べる。“1ドル入札”が起こるなど、少し以前の日本の公共市場と同様な状況になっている。一方で、韓国のソフト産業は2003年まで輸入額が輸出額を上回っていたが、2004年に逆転しさらに拡大している。まだ金額は小さいものの、生産性を高めて輸出産業としての地位を築いていく構えだ。