富士通は5月9日、Webアプリケーション・サーバー製品群の新版「Interstage V8」の出荷を開始した。四つの新製品を含む全22製品で構成する。目玉は、新製品の「Interstage Job Workload Server V8」。LinuxやUNIXといったOSで稼働するオープン系システムで、バッチ処理を実施する際の課題を解決するためのミドルウエアだ。「オープン系システムにおけるバッチ処理の基盤製品は世界初」とソフトウェア事業本部長の棚倉由行常務は説明する。
Job Workload Server V8は日次や月次のバッチ処理に加え、ビジネス状況の必要に応じてバッチ処理の「サービス」を呼び出して随時実行する、SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づくシステムでの利用を想定している。例えば、在庫が一定の値を下回ったら、生産管理システムで部材の発注量を計算するバッチ処理のサービスを自動で呼び出し、実行させるといった具合だ。今田和雄ミドルウェアプラットフォーム事業部長は、これを「バッチ処理の“オンデマンド化”と呼ぶ」と話す。
これまでは、オープン系システムでバッチ処理のオンデマンド化を実現するのは困難だったという。「夜間などに一度に実行していたバッチ処理を、単純に分割して実行すればよいというものではない」(今田事業部長)。オンデマンド化すると、複数のバッチ処理が同時に進む可能性が高い。その際に信頼性を確保しようとすると、システム構築に手間がかかってしまうのである。
例えば、データのソート結果をファイルに出力するジョブと、そのソート結果を引き継ぐジョブがあるとする。前のジョブが消滅して次のジョブが生成されるまでの間、ソート結果を記述したファイルはどのジョブの管理下にもおかれない状態になる。その状態はごくわずかな時間だが、「オープン系OSはジョブ単位の排他制御機能を備えていないために、まったく関係のない別のジョブが誤ってそのファイルを利用することもありうる」(今田事業部長)。すると、本来そのファイルを使うはずだったジョブでエラーが生じる。このような事態を避けるため、従来はアプリケーションでジョブ管理機能を作りこむなどの対応が必要だった。
このほか、複数のバッチ処理が同時に進めば、バッチの開始処理などを何度も実行する必要があるのでオーバーヘッドがかかる。「1回のバッチ処理あたりのオーバーヘッドが50秒だったとしても、5分に1回の頻度で実行していると1日あたり合計4時間かかってしまう」(今田事業部長)。
Job Workload Server V8は、こうした課題に対処するための機能を備える。例えば、ジョブ単位の排他制御を可能にしたり、バッチ処理の実行プロセスを常駐させ、開始処理などにかかるオーバーヘッドを軽減する機能を備える。「メインフレームはこれらの機能を以前から備えていたが、今回オープン系システムでも可能にした」(今田事業部長)。同社はメインフレーム並みの機能と信頼性の確保を目指したIAサーバー「PRIMEQUEST」の拡販を進めており、オープン系システムでの“バッチ処理問題”の解決は急務だった。
Job Workload Server V8の出荷開始は6月末、価格は705万6000円から。富士通がInterstage V8として発表した新製品としてはほかに、インターネット接続機能付き携帯電話向けのコンテンツ変換ソフト「Interstage Transcoding Server V8」(105万円から)、携帯電話から業務システムを利用するための開発・実行ミドルウエア「Interstage Mobile Manager V8」(105万円から)、EDI(電子データ交換)用システム構築ミドルウエア「Interstage CollaborationRing EDI Server V8」(199万5000円から)がある。