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与謝野馨 経済財政政策・金融担当大臣(撮影:菅野勝男)
与謝野馨 経済財政政策・金融担当大臣(撮影:菅野勝男)
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Open Source Revolution!会場
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 「Googleは膨大な数のLinuxサーバーを活用しているように,オープンソース・ソフトウエア(OSS)はWeb 2.0と呼ばれる新しい動きの基盤になっている。日本もこのトレンドに遅れることなく,オープンソース活用競争でリードすべき」---与謝野馨 経済財政政策金融担当大臣は5月15日,イベント「Open Source Revolution!」の基調講演でオープンソースの活用が日本の競争力を左右するとの認識を示した。

 与謝野氏は元通産相であり,自由民主党の政務調査会長およびe-Japan重点計画特命委員会などの立場でオープンソース・ソフトウエア推進政策に関わってきた(関連記事)。

 「私はオープンソースを一所懸命やってきた人間。役職は変わったが,今後とも,オープンソース推進のお手伝いをしていきたい」---与謝野氏のこの言葉で,「OSS活用による日本の競争力強化の道筋」と題する基調講演は始まった。

「OSSとオープン・スタンダードの活用は一刻の猶予も許されない」

 与謝野氏は,OSSを推進する理由として「IT産業の競争力強化と,ITを利用する産業の競争力の強化という2つの要請がある」と述べる。

 「日本のソフトウエア輸出入比率は1対30という大幅な輸入超過。グローバルに活躍している企業は少なく,営業利益率は全般的に低調」(同)。基本ソフトウエアを海外の商用ソフトウエアに依存していることは,高額なロイヤリティの支払いによる利益の低下と,ブラックボックスのまま利用することによる技術力の低下によってIT産業の競争力が低下,さらにそのためにより海外ソフトウエアへの依存が高まるという悪循環となっていると指摘。「高額なロイヤリティが必要なく,中身をいじれるOSSの活用を通じて悪循環を断ち切る必要がある」(同)。

 またソフトウエアは経済,社会,生活の基盤であり「ソースコードが非公開の外国製ソフトウエアに依存していることは経済安全保障上,またセキュリティ上も重大な問題」であるとの見解を示した。

 文書ファイル形式Open Document Formatが国際規格となったことに触れ(関連記事),オープンソースの推進とともにオープンスタンダード推進も必要であると述べた。政府の情報システムやその情報システムに蓄えられている情報資産は国民の重要な財産であると指摘,Microroft Wordだけでなく,他のアプリケーションでも同様に扱えるようにしなければならないとして「政府におけるOSSとオープンスタンダード活用の加速は一刻の猶予も許されない」と強調した。

 欧州,米国,アジアなど各国政府が自らのOSSの利用を加速している。例えば韓国では政府がLinuxの開発に関与,それを自治体で積極的に活用するとともにサポート体制も提供している。与謝野氏は「これらの動きは,政府が先導的にOSSを活用することで民間におけるOSSの活用を促し,また国民の貴重な財産である情報資産が特定のベンダーに依存することを防ごうとする動きである」と語った。

「Web 2.0の基盤はオープンソース」

 さらに「昨今,Web 2.0と呼ばれる流れがある。インターネット上で大量の情報を活用整理し,多くは無料でサービスを提供し著しく成長している。その基盤となっているのはオープンソース・ソフトウエア。代表的な企業がGoogleだが,その膨大な数のサーバーでLinuxを使用している」(与謝野氏)。特定ベンダーへのロイヤリティが支払いがないからこそ,競争力を持つサービスが実現できている。

 また「GoogleはこれまでデスクトップPC上に搭載されていたメールやスケジュール管理などのソフトウエアをインターネットで提供しようとしており,これによりデスクトップPCにはWebブラウザだけあれば済むようになり,デスクトップPCにおけるLinuxの活用も進むと考えられている」(同)。与謝野氏は「日本も,官民ともにこのようなトレンドに遅れることなくオープンソース活用戦争でリードし,競争力の強化を図るべき」との見解を示した。

「栃木県二宮町のような取り組みを全国に」

 ただし「オープンソース活用競争でリードするためには,3つの壁を乗り越えなければならない」(与謝野氏)。ひとつはオープンソース・ソフトウエアを使用した際に特許侵害で訴訟を起こされる可能性があるなどの「制度の壁」。2つめは利用側の理解不足や体制不足,新しいことに取り組むにあたっての消極的姿勢など「組織の壁」。3つめは信頼性や性能の評価が困難という「技術の壁」である。

 「制度の壁」に対しては特許の共有化などの産業界での取り組みや,特許権の権利行使のあり方など制度の再考が必要となる。「特許制度の目的は技術革新を促進すること。悪意を持って社会に損害を与えるような特許権の行使に対しては,一定の制限を設けることを検討すべき時期が来ているのではないか」(与謝野氏)。

 また「組織の壁」に対してはオープンソース・ソフトウエアを使いこなす人材の充実と,政府・自治体・教育現場などでの率先した活用がカギとなる。特に「政府自治体で率先してOSSを使用し,そこで見つかった課題を一つ一つつぶしていくことが重要」であるとし,北海道札幌市、栃木県二宮町、大分県津久見市、沖縄県浦添市で行われている自治体へのオープンソース・デスクトップ導入実験について紹介した。中でも二宮町は町役場のPCを全てLinuxとし,ブラウザやワープロも全てオープンソースと徹底していることを紹介し(関連記事),「全国的にこのような取り組みがなされることを期待する」と述べた。

 また岐阜県,茨城県つくば市,京都府の京田辺市,岡山県総社市で行われている教育現場でのLinuxデスクトップ導入実験も紹介(関連記事)。「教育現場の多くは予算が限られていることが多く,OSSによる低廉なパソコンの活用はこの問題解決に役立つ。教育現場の問題解決とOSSの推進が同時に進むことを期待する」(与謝野氏)。

 「技術の壁」に対しては政府主導での信頼性評価手法や障害解析ツールの整備が有効であるとする。与謝野氏はこういった情報を蓄積したサイトとして,独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「オープンソースソフトウェアセンター(OSSセンター)」によりこの日公開された技術情報データベース・サイト「OSS iPedia」を紹介した(関連記事)。

 OSSセンターはオープンソース関連施策を集約する組織として今年の1月創設された(関連記事)。与謝野氏は「OSSセンターがOSS推進の司令塔となり,3つの壁を超える取り込みが行われることを期待する」と述べた。

「OSSの推進は日本の競争力向上のカギ」

 また国際的な連携も重要であると指摘。日本は,中国および韓国と「北東アジアOSS推進フォーラム」(関連記事),アジア諸国と「アジアOSSシンポジウム」の開催などを通じ共同でオープンソース・ソフトウエアの推進を行っている。与謝野氏は次回の北東アジアOSS推進フォーラムは日本で開催されることを紹介,「日本がリーダーとなってOSSの推進を盛り上げていただきたい」との期待を表明した。またアジアの動きを世界の動きへ拡大すため,EUなど他地域の連携も目指さなければならない,と述べた。

 「OSSの推進は日本の競争力向上のカギであり,産官学と国際間の連携を通じOSS活用を加速し,日本の競争力向上をさらにさらに加速していきたい」---与謝野氏はこう基調講演を結んだ。