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 18日に開幕した「IPテレフォニー&ケータイソリューション2006」「ビジュアル・コミュニケーション2006」では、東京大学大学院の伊藤元重教授が「ITの技術とビジネス革新」と題した基調講演を行った。伊藤元重教授は国際経済を専門とし、『デジタルな経済』(日本経済新聞社)など著書も多い。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」にはコメンテーターとして出演中だ。

 講演でまず指摘したのがIT(情報技術)がもたらすインパクトである。米国ではITバブル以前に大きなものでは3つのバブル崩壊があったという。19世紀前半の「鉄道バブル」、20世紀初頭の「放送バブル」、1920年代の「自動車バブル」。鉄道の敷設や放送の開始、T型フォードの開発が経済や社会を大きく変えると信じられて巻き起こったものだ。伊藤教授は、長期的な米国株式市場の動向を示すグラフを紹介しながらITバブルが過去のバブルより大きな規模であったことを示した。

 バブルの直前には新技術に対する期待から多額の投資が市場に流れ込む。「ITバブルは崩壊したが、そのとき流れ込んだ投資がITを安価にして企業革新を助けている」と伊藤教授は語る。さらに、昨年の世界経済の成長率は過去30年で最高の4.3%。米国は5%近い。中国は約10%にも上る。世界経済の成長の原動力となっている米国で、注目すべきなのは金融と流通であり、情報のかたまりのような産業なのに人海戦術に頼ってきたからITを導入したときに成果が表れやすい、と自説を続けた。

 一方、すべての産業がITの恩恵を受けるわけではない。逆にITにより駆逐されてしまう産業もあるという。大切なのは「ITとの関係が補完なのか代替なのか」(伊藤教授)の見極めだ。補完と代替をわかりやすく例に挙げると、コーヒーとミルクは補完関係で、コーヒーと紅茶は代替関係となる。ミルクがないとコーヒーを飲まない人もいるからこの2つは補完し合っており、紅茶が出されればコーヒーに手を出さない人もいるのでこの2つは代替関係にある。

 伊藤教授は補完の例として、コンビニエンスストア大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都千代田区)の取り組みを挙げた。同社はインターネットで商品を注文し、最寄の店舗で受け取るセブンドリーム・ドットコムというサービスを展開している。商品を自宅で受け取ることもできるが、伊藤教授が数年前に鈴木会長と対談したときに92%が店舗での受け取りを選んでいたという。店舗とインターネットが補完関係にある理想的な例だ。

 一方でITの進化によりその存在をおびやかされている産業や企業は少なくない。「自社のサービスのITとの関係が補完なのか代替なのかしっかりと見極めていくことが大切になる」と伊藤教授は締めくくった。