キー最大手の美和ロックは2006年5月、FeliCaを使ったドアキー「iEL」を発売した。開発に携わったシステム機器企画開発部企画課係長の角谷健氏にFeliCaを採用した経緯や、今後の計画などを聞いた。
■今回発売した「iEL」はどのようなシステムか
発売したのは、基本的に集合住宅向けのドアキーだ。iELタイプのドアには、通常の鍵のほか、施錠・解錠をするセンサーがついており、キーとしてFeliCaなどを利用できる。電気錠と呼ばれるタイプで、ドアのキー部分にモーターなどを組み込んで、電気信号で施錠・解錠をおこなえるのが特徴だ。
■どうしてFeliCaをキーとして採用したのか
「iEL」ではキーとして3つのタイプを用意した。一つはFeliCaカード。もう一つは「ノンタッチキー」と呼ぶもので、従来の形状のキーにタグを埋め込んであるもの。そして「タッチキー」というキーは名刺入れ程度の大きさのカードで、ポケットに入れたままで使える。それを持ったユーザーがセンサーに触れば、キーを持っていることがセンサーで判断されて施錠・解錠できる。
このうちFeliCaタイプは、キー以外の情報も入れられるので、さまざまな用途へ応用できるという利点がある。いろいろな情報と連携させて使うことが可能だ。また、ドアキーという分野で見ると、電気錠のシェアはまだ1%程度。安全性などを考えるともっと普及させていく必要がある。知名度が高いFeliCaを使うことで、電気錠の採用にもつなげていきたい。
■実際の導入事例は
集合住宅向けのFeliCaのシステムはまだ発売したばかりで、導入はこれからの段階。ただ、すでに大手のデベロッパーなどから引き合いは来ている。業務向けとなるが、FeliCaを使ったシステムは京王プラザホテルや東京プリンスホテルなど、すでに4000セットほどの導入実績がある。
住宅向けのシステムがなかなかでてこなかったのは、価格の問題が大きい。FeliCaを使ったシステムでは、従来では1つのドアにつき30万~50万円程度の費用がかかっていた。今回の「iEL」では、リーダー(読み取り機)、制御盤、ID制御盤などを小型化して大幅なコストの削減を実現した。これによって、価格は1つのドアで従来価格の3分の2程度まで引き下げることができた。
■停電時にはどう対処するのか
電気錠は、センサーで施錠・解錠する機能だけでなく、従来からある物理的なキーも利用できるようになっている。そのため停電や電気が供給されない事態になると、センサー部は反応せず動かないが、従来からあるキーを使って施錠・解錠できる。停電時には電気錠はそのままの状態を維持するので、防犯上の問題もない。
■FeliCaのキーを紛失した場合はどうなるのか
今回発売したシステムでは、制御盤をドアに組み込んでいる。そのためなくした場合は、各戸で簡単に登録情報の削除ができるようにしてある。再発行の手順は、マンションのデベロッパーごとに異なるが、基本的にはデベロッパーに連絡し、カードを再発行してもらうことになる。登録作業はドアの制御盤で簡単に行える。
■どんなシステムに発展していくのか
FeliCaを使うメリットの1つに携帯電話で利用できる点がある。今年の秋には、携帯電話をドアキーとして使えるよう計画をしている。今後は、カードでなく携帯電話を自宅の鍵としても使えるようになる。
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