中堅システム・インテグレータのアクシスソフトは,2003年度からオフショア開発を取り入れている。当初は年間数件程度だったが,2005年度から全社的に導入し,過去30案件を経験。成功率はほぼ100%だと言う。同社 ソリューション事業部 Webソリューション部 部長の平野益光氏(写真右)と,同部第2グループ テクニカルマネージャの下岡秀幸氏(写真左)に,オフショア開発の成功の秘訣を聞いた。(聞き手は松山 貴之=日経SYSTEMS)
---当初からオフショアに積極的だったのか
(平野氏) 以前は顧客から依頼されたシステムを自社内で作ることが多く,プログラムも内製していた。オフショア開発は2003年度から導入していたが,当初はプロジェクト・マネージャに受け入れてもらえず今ほど積極的ではなかった。
だが,試験的に導入したプロジェクトの利益率は高く,コスト面の魅力の大きさを実感した。また,他社の失敗事例を分析すると,オフショア先の企業選びに失敗しているというケースが目立ち,企業選びに時間と手間をかけさえすれば問題ないと考えるようになった。
---どうやってオフショア先の企業を選定したのか
(平野氏) 日本拠点の有無や現地の設備状況などから50社程度に絞った後,トライアル・プロジェクトでパートナーとしての相性を見極めた。オフショア先の企業に求めたことは,(1)高い技術スキル,(2)しっかりとした開発プロセス,(3)日本語能力---の3点。
トライアル・プロジェクトでは架空の要件定義書を作成し,それに基づいてアプリケーションを作成するとした場合の「見積もり」「スケジュール」「体制案」を,3営業日で提示するように求めた。要件定義書は意図的に質問が出るように作成しており,これで日本語能力を見極めた。その後2週間かけて,基本設計書の作成まで依頼した。これにより技術スキルを見極め,パートナーとして付き合いたいかどうかを判断した。
---「パートナーとして付き合いたいかどうか」とはどういうことか
(平野氏) 単なる外注先として期待するのではなく,開発パートナーとして一緒にやっていきたいかどうか,という意味だ。現地の技術者のスキルは高く,パートナーとしてふさわしい力量がある。
パートナーと考えているので,トライアル・プロジェクトを実施した後で互いに課題を出し合い,どうすればより良くなるかを話し合った。こうした共同作業を実施した後で実際のプロジェクトを行っているので,意識のズレなどはなく,プロジェクトの成功率はほぼ100%である。
唯一成功と判断できなかったケースは,オフショア先の品質管理に問題があった。しっかりとした品質管理チームがあるように見えたが,内容が伴っていなかった。苦い経験だ。
---オフショアならではの難しさは何か
(平野氏) コミュニケーションをきちんと取ることだ。その部分は,開発用のポータル・サイトで補っている。
(下岡氏) このポータル・サイトはシステム開発プロジェクトを支援するためのもので,(1)ファイル共有機能,(2)掲示板機能,(3)タスク・トラッキング機能---などをインターネット上で提供している。これにより,プロジェクトの現在の状況や問題を一目瞭然にできる。
技術的には,ファイル共有に「WebDAV」を,掲示板に「Wiki」を利用している。WebDAVは,Windowsが標準で採用していることが決め手になった。Wikiは,誰でも書き込め,その履歴が残る点を評価して採用した。
構成管理ソフトの「CVS」を利用しており,設計書やソースコードもこのポータル・サイトで管理している。オフショア先も開発ポータルに直接アクセスし,ソースコードや資料を登録する。インターネットを介して利用するため,クライアント証明書とBASIC認証でセキュリティを確保した。