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NEC 代表取締役 執行役員社長の矢野薫氏
NEC 代表取締役 執行役員社長の矢野薫氏
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 NEC 代表取締役 執行役員社長の矢野薫氏は2006年5月29日、不振が続く携帯電話機事業の再建のため、松下電器産業の100%子会社であるパナソニック モバイルコミュニケーションズ(PMC)との協業をさらに深めることを明らかにした。同日開催した経営説明会で、矢野社長が「PMCとの間でさらに深い協業について検討を開始した。現時点で詳細は明らかにできないが、そう遠くない時期に発表する」と説明。詳細なコメントは避けたものの、単純な提携の強化にとどまらず、合弁会社の設立に踏み込む可能性もある。

 NECは既にPMCとの間で、Linuxをベースとした携帯電話機用の組み込みソフトウエアの共同開発などで協業関係にある。また、米テキサス・インスツルメンツを含めた3社で携帯電話機向けのアプリケーションプロセッサーなどのLSIを共同開発する方向で準備を進めている。

「ノキアとは戦わない。まずは国内で勝つ」

 PMCとの協力関係強化の狙いとしては、「携帯電話機のハードウエアの共同開発、部品の共同調達などでスケールメリットを生かし、携帯電話機向けの開発投資を増やしていく。当面、フィンランドのノキアや英ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズなど、海外大手との直接対決は避け、10社以上の携帯電話機メーカーがひしめく国内市場で勝つことを優先課題としていく」(矢野社長)と説明した。

 PMCと共同出資の新会社を設立するのか、あるいは出資を伴わない業務提携にとどめるのかなど、協業の事業形態についても言及を避けたが、携帯電話機事業の売却・撤退は明確に否定した。「携帯電話機事業は、10年先でも生き延びているだろう。人間とITの世界を介するインタフェースとして非常に重要だ。NECはネットワーク事業やIT事業を展開する立場から、松下は家電という立場から、それぞれ携帯電話機事業を重視している。決して携帯電話機事業から逃げ出すための協業ではない」(矢野社長)と強調した。

海外3G端末は当面撤退

 海外向け事業は、中国などでのGSM端末事業は継続するものの、第3世代携帯電話(3G)端末事業については2006年度の販売見込みを「ほぼゼロ」(NEC広報部)としている。同社は他社に先駆け、2003年に香港ハチソン・ワンポアの3G事業開始とともに端末納入を始めるなど(関連記事1)、海外での3G端末事業に積極的な姿勢を見せていたが、当面は撤退することになる。これについては、「当初大きなラッパを吹いた割にこういう結果になり残念だ。技術力を過信し、市場の変化に対応する力がなかった。特に日本の3G市場と欧州の3G市場とでユーザーのし好が違っていく中で、両方の変化に対応できるだけのリソースがなかった」(矢野社長)と振り返った。

 ただ、再参入に向けて含みも残した。同社がNTTドコモ向けに供給を始めた「FOMA N600i(SIMPURE N)」を引き合いに出し、「(従来は高機能機中心のラインアップだった)NTTドコモも、こういったシンプルな端末を必要とするようになった。日本市場と欧州市場との間で、市場の同質化も進んできている。こうした市場に向けて事業を展開していけば、NECの強みを生かせる」(矢野社長)としている。

重点領域は次世代通信設備の受注拡大

 矢野社長が今年度の事業戦略で最重点課題として掲げたのは、NTTやKDDIといった通信事業者が敷設を進めているIP網や光伝送システム、および動画配信や電子政府などインターネット上でのサービス構築に必要となるサーバー機などの受注拡大である。矢野社長は国内の通信設備市場におけるシェアの高さや、海外での3Gや「iモード」向け通信設備納入の実績などを強調した。

 その上で、現在の優位性が今後も維持できるのかという点については、「通信事業者向けの事業は息が長い。競合他社が当社に匹敵するだけの技術力を急に身につけることはできないし、市場におけるNECのリードが急に崩れることもない。もちろん油断しているわけではなく、2006年度は通信関連の研究開発費を2005年度より200億円積みます予定だ。国内ではNTTグループがIP網の構築を本格化する今年度の受注状況が、今後3~5年のすう勢を決めることになる」(矢野社長)とコメントした。

NECビッグローブ人事は「苦渋の決断だが、影響小さい」

 矢野社長は質疑応答で、2006年7月に設立予定のNECビッグローブの社長人事を急きょ変更したこと(関連記事2関連記事3)について触れ、「この場ではあまり詳しく話さないが、苦渋の決断だった。とはいえ、NECビッグローブに常駐する役員が実質的なオペレーションを司るわけであり、ガバナンスを利かせる社長の交代による大きな影響はない」との見解を示した。

 なお、矢野氏は2006年4月1日付でNECの社長に就任(関連記事4)。今回の経営説明会は、矢野氏が社長に就任して以来初めての開催となる。