GMOインターネット証券は5月14日,インターネット証券取引用システムを稼働した。(1)先行するインターネット証券会社よりも低い利用料(株式取引の手数料)でサービスを提供する,(2)証券取引だけでなくほかのサービスも合わせて提供できるようにする,という二つの経営目標を達成するために,オープンソースを採用し,ユーザー認証サーバーを分離するという工夫をした。
システム投資が利用料に跳ね返るインターネット証券では,投資額を抑えることが不可欠。そこで,他のインターネット証券会社で広く採用されているUNIXサーバーではなく,Linuxを搭載したPCサーバーを採用。また,Webアプリケーション・サーバー用ソフトとしてTomcat/JBoss,フレームワークにはSpringとStrutsと,オープンソース・ソフトを採用した。ただし,データベース管理ソフトは,信頼性を確保するためにOracleを採用した。
サーバーの筐体も,スケールアップを前提とした16プロセサや32プロセサを搭載する大型サーバーでは「たとえオープンソースを採用してもサーバーの購入費用が億円単位になってしまう」(高島秀行 代表取締役社長)。そこで,1台当たり数百万円程度で購入できる4プロセサ搭載のPCサーバーでスケールアウトしていく方式を採用して,初期投資を抑えた。利用者ごとに処理を担当するサーバーを割り振り,処理が終わるまで割り振りを変更しない。ユーザーの割り振り管理機能は,ユーザー認証用サーバーに組み込んだ。
ユーザー認証用サーバーは,株式取引処理用のサーバーと独立して配置してある。「認証用サーバーを独立させておけば,今後,新しい金融サービスを始めるときにも,ユーザーにシングル・サインオンでサービスを提供できる」(高島氏)からだ。
システムの開発費用は5億円程度で済んだ。「同等のシステムをUNIXベースで開発すると,20億~30億円程度かかるはず」(高島氏)と見ている。運用コストも「他のネット証券と比べて10分の1くらいに抑えられる」(高島氏)と見込んでいる。
ITエンジニア時代の不満を反映
同社の社長を務め,今回のシステム開発にも携わった高島氏は,証券システムやWebシステムの開発経験を持つ元 金融系ITエンジニア。Webシステム・コンサルタントだった昨年6月,証券会社を設立するため,GMOグループに移り,一人で証券システムの開発構想や証券会社の設立準備を始めた。その後,開発者や業務担当者が加わり,9月にシステム開発プロジェクトをスタート。5月14日のサービス開始にこぎ着けた。
PCサーバーによるスケールアップの構成などは,高島氏がITエンジニア時代に抱えていた不満を反映した構成である。「証券システムの処理能力が追いつかず,システムを拡張したいと思っても,ハードウエアの調達費用が高額でうまくいかないことがあった」と高島氏は話す。
「証券系システムは開発したことはあっても,証券会社の設立は初めて。一から証券会社の準備を始めてサービス提供できたことは,我ながらすごいことをやったなと思う。エンジニア時代に,こういうシステムにしたらいいのにと思っていた鬱憤も晴らすことができた」(高島氏)と振り返る。