元社員(懲戒解雇)による不正取引が発覚し、2006年3月期に赤字へ転落した日本システムウエア(NSW)。元社員は顧客の印鑑を偽造し、通常の取引の中に架空の機器販売を紛れ込ませ、機器や仕入れ資金を着服した。その数は36件、金額にして4億2800万円に上る。さらに同社は5月30日付けで、実際に入金があった取引の中に、不正発覚を隠蔽する目的で行われた架空取引が3件あったことを発表した。
一連の不正取引が発生した背景には何があったのか。再発防止に向けて、どんな対策を講じるのか。同社の中島秀昌社長(写真)に聞いた。発言要旨は以下の通り——。
事件を聞いた時は、正直言ってびっくりした。社内でも、最初は多くの社員が、「何かの間違いでは?」と驚いていた。
当社の社内ルールは、他社と比べても厳格な方だと思う。システム開発や機器の発注に関して、営業担当者と顧客との「口約束」は一切認めない。システム開発を受注するにも成果物を納品するにも、必ず証憑が必要になる。例えば顧客からの「注文書」がなければ、SE部隊は稼働できないルールを敷いている。納品にも検収にも、必ず営業担当者が証明書を作成し、顧客の確認印をもらってから、顧客に請求する。
ただ、機器販売に関しては、社内のSE部隊は介在しない。このため、受注から納品、検収までの手続きを営業担当者が単独で完結できてしまう。注文書や納品書といった書類を作成する必要はあるが、書類の内容や取引の実態を上司が確認せず、担当者に任せてしまった。結果として、この点に不備があったことになる。
警察による捜査の途中なので詳しいことは言えないが、どう考えても元社員の単独行動では難しい。当社以外の協力者がいるのではないか。元社員は、平凡で特に目立つことはなかったが、きちんと営業成績を上げていた。
とはいえ、お客様や投資家の方々、関係者に多大なご迷惑をおかけしたのは事実。二度とこのような事態が起こらないよう、徹底した再発防止に努める。顧客との取引をより厳格化するため、納品物の実物検品を営業部門と調達部門で必ずダブル・チェックするほか、顧客に入金予定を確認したり督促したりするのも、(営業担当者ではない)第三者に担当させる。
もちろん、完璧な対策はないことは承知している。管理強化ばかりでは、現場のモラルは下がるばかりだ。時間はかかるかもしれないが、そもそも不正を働こうと思わない風土作りを、地道に進めていくしかない。
■変更履歴 本文7段落目の最後の文で、当初は「専任の部署に担当させる」と記述していた個所を、「(営業担当者ではない)第三者に担当させる」に訂正しました。 |