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「日本発の提案がどのようにLinuxに受け入れられたか」と題するセッション
「日本発の提案がどのようにLinuxに受け入れられたか」と題するセッション
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LinuxカーネルのメンテナであるAndrew Morton氏
LinuxカーネルのメンテナであるAndrew Morton氏
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LinuxカーネルとXenの開発者Chris Wright氏
LinuxカーネルとXenの開発者Chris Wright氏
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Stephen Hemminge氏
Stephen Hemminge氏
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 OSDLジャパンは6月13日,OSDL Japan Linux Symposiumを開催した。Linuxカーネルのメンテナ(責任者)であり,Linus Torvalds氏に次ぐ中心人物であるAndrew Morton氏らが来日,日本の開発者と意見を交換した。

 「日本発の提案がどのようにLinuxに受け入れられたか」と題するセッションでは,VA Linux Systems Japan 技術本部長 高橋浩和氏,慶應義塾大学 政策・メディア研究科 吉藤英明氏,米Twin Sun 濱野純氏がLinuxなどにコードがマージされた経験を紹介した。

 VA Linux Systems Japanの高橋浩和氏はネットワーク・ファイル・システムを高速化する「ゼロコピーNFS」などを提案,Linuxに組み込まれた。その経験から得られた教訓として「できたものを送りつけるより,なるべく初期段階から議論していくべき」と指摘した。また企業に対しては「オープンソース・コミュニティでは開発者は皆,会社名ではなく個人で仕事をしており,個人として信用を積み上げていく。担当者は短期間で交代させずに長期に担当させるべき。またコミュニケーションの時間が開発よりかかることを理解してほしい」と要望した。さらに「情報やコードを公開しやすいように,公開できない情報が紛れ込まんでしまわない体制,あるいはオープンソース専門部門を作ることが望ましい」と述べた。

 慶應大学の吉藤氏はLinux上でIPv6を実装するUSAGI Projectの経験を報告。LinuxにほかのOSとAPIが違う点があることから,Linuxコミュニティに対しそれを変更するパッチを送りつけた。しかし,「我々はLinuxコミュニティにとってストレンジャーだった。おまけにでかいパッチをどかんと送ってしまった。現在,自分がパッチを受け取る立場になってみると確かにでかいパッチは嫌だとわかる(笑)」。そこで「Ottawa Linux Symposiumに参加してフェース・トゥー・フェースでコミュニケートし,いっしょうけんめいパッチを分割した」。できるだけ細かく分割してレビュープロセスを簡単にすることが重要だと吉藤氏は指摘した。また責任を持つことを示すことも必要という。「コードを入れるまではがんばるけど,その後いなくなると思われてはいけない」(吉藤氏)。

 Twin Sunの濱野氏は,Linux カーネル開発で使用されているバージョン管理ツールgitのメンテナである。最初はユーザーで,パッチを提供しているうちに何ヶ月かしてメンテナなったという。受け入れれやすいパッチとは,たとえば自分が必要なのは日本語化だとしても,ほかのユーザーにも役立つよう国際化するといった,一般に役立つパッチだと指摘する。「英語が壁と感じるかもしれないが,実際には過半数の開発者は英語がネイティブじゃない。恐れる必要はない。ただし丁寧に」(濱野氏)。

 LinuxカーネルのメンテナであるAndrew Morton氏はこれらの報告に対し「私の仕事はみなさんの仕事をカーネルに入れることと,カーネルをよいものにすること。この2つが合致すればよい結果が得られる」と語り,「心配事があれば,私に直接メールを送ってくれればお手伝いできる」とカーネル開発への積極的な参加を呼びかけた。Morton氏によればLinuxカーネルに対する日本からの貢献は急増しており,送付されるパッチの5%がすでに日本からのものになっているという。

 ディスカッションのほか,Andrew Morton氏によるカーネル開発の現在の状況,Chris Wright氏による仮想化ソフト「Xen」の現状解説,Stephen Hemminger氏によるLinuxネットワーク・モジュールの状況解説などがあり,参加した日本の技術者との質疑応答も行われた。講演資料はOSDL Japan Linux Symposiumのページで公開されている。