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 日立製作所はグループ内に分散している通信関連事業の再編と連携強化を進めている。2006年6月末に、日立インフォメーションテクノロジー(日立IT)のIP電話事業と、日立ハイブリッドネットワーク(日立ハイブリッド)の映像系システム事業を日立コミュニケーションテクノロジー(日立COM)に集約。さらに日立ITと日立ハイブリッドを合併させることを明らかにしている。2004年には、グループの通信関連事業に取り組む各社が参加し、IP電話システムやネットワーク機器の開発・販売の支援組織「CommuniMax販売支援センタ」を立ち上げている。日立製作所のネットワークソリューション事業部の福田吉治CommuniMax販売支援センタ長(写真)に現状と今後の動きについて聞いた。

--日立グループの通信事業の再編は、どのような狙いがあるのか。

 次世代通信網(NGN)に適用される信頼性が高い大規模なネットワーク向けの機器開発と提供の体制を整えたものだ。NGNの上で利用されるアプリケーションについても同様に開発力を底上げしたい。このため、日立ITのコンピュータ系技術と日立ハイブリッドの映像系技術、日立COMの通信系技術の融合が不可欠だった。

--日立COMなど各社の位置付けはどのように変わるのか。

 日立COMをNGNを中心としたネットワーク機器やIP電話システムを開発する中核的な会社として位置付けていく。対象とする顧客は通信事業者だけでなく、一般企業や公共事業体まですべてをカバーする。日立ITと日立ハイブリッドを合併させる新会社は通信系LSIの設計や組み込みソフトの開発に注力し、日立COMのNGN製品開発を支援していく。

--CommuniMax販売支援センタの役割と活動内容について教えてほしい。

 センタは、今回再編する3社、日立本体、日立INSソフトウェア(日立INS)の計5社を中核に2004年に立ち上げた。現在は、日立情報システムズ、日立電子サービス、アラクサラネットワークス、日立システムアンドサービスの計9社が参加している。

 各社が持っているIP電話システムとネットワーク機器を「CommuniMax」のブランドで統一し、取引先のベンダーや日立グループ各社が、システムを提案したりソリューションを提供したりするのを支援するのがセンタの目的だ。グループ内の製品を見渡して、ユーザーに最適なソリューションを提供する。従来は、グループ企業間で競合することもあった。センタには「広報・宣伝」や「製品連携の強化」といったワーキング・グループも立ち上げている。現在、各社から約100人のスタッフが集まっている。センタの取り組みとしては、NGNの比率が高まっていくものと見ている。

--センタの実績はどの程度出ているのか。

 CommuniMaxブランドでの製品やソリューションの売り上げは、順調に伸びている。IP電話対応のIP-PBXや従来型PBX、ルーターなどネットワーク機器も含めて、2005年度の実績は約1300億円だった。2006年度は1500億円まで伸ばしたい。

--IP電話システムの販売やライバル企業との競合の状況はどうか。

 電話システムにフォーカスすると、従来型PBXの市場は年間約500億円。日立はグループでこのうち約2割のシェアを持っている。これを死守しつつも、新しいIP電話システムの売り上げを上積みしていく。実際、金融機関や官公庁、教育機関などで、IP電話システム導入の事例が出始めており、まだまだ伸びる。IP電話市場でのライバルは、現時点ではNECや沖電気工業だ。シスコシステムズは、今後は分からないが現時点では脅威ではない。

 さらに、テレビ会議のような映像系のソリューションにも注力する。例えば、金融機関の本部と各支店を接続。ネットワークを通して専門家が顧客にコンサルティングするといったニーズが高いことに気づいた。実際、大手の証券会社や地方銀行から引き合いが来ている。