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カスタマー・ケア・センターの熊澤伸宏センター長
カスタマー・ケア・センターの熊澤伸宏センター長
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 外資系製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)が一風変わったコールセンターの活用法で業務の支援に役立てている。この5年間はコールセンターで需要の掘り起こしに取り組み、今年に入ってからは「社内顧客」を相手にしたコール業務にも力を入れ始めた。

 GSKが「カスタマー・ケア・センター」と呼ぶコールセンター部門を設立したのは2001年1月。狙いは抗うつ剤の潜在的な需要を掘り起こすことにあった。

 医薬品は薬事法により製品名を宣伝することが禁じられている。そこでGSKは、DTC(Direct to Customer)と呼ばれるキャンペーンに取り組んだ。

 うつ病というのは自覚症状が薄い病気だ。日本の自殺者数は1998年に3万人を突破して以降、大きく減少していない。その中にはうつ病の人も多いといわれる。GSKのDTCキャンペーンは、このうつ病についての正しい情報を広く提供し、テレビCMや新聞・雑誌広告の最後にコールセンターの番号を載せておくといったものだった。

 この方法では抗うつ剤などの製品名は前面に出ないものの、コールセンターに電話をかけてきた人を医療機関へ案内することできる。今まで医師という顧客の向こうに存在し、直接触れることがなかったもう1つの顧客へリーチできた瞬間だった。

 2002年からうつ病のDTCキャンペーンを本格的に展開し、2005年までの4年間に22万件のコールを受け、そのうち9万件については最寄りの医療機関を案内している。

 「一番難しかったのは担当者の考え方の転換にあった」と話すのはマーケティング本部カスタマー・ケア・センターの熊澤伸宏センター長だ。従来、GSKを含む製薬メーカーの電話窓口の担当者は、MR(医薬情報担当者)と呼ばれる自社の営業担当者や顧客である医師に、医薬品や疾患についての専門的な知識を提供するのが主な仕事だった。

 学術担当者とも呼ばれる彼らは、DTCキャンペーンの開始により、一般の顧客からの問い合わせにも対応しなければならなくなった。専門職としての誇りを持つ担当者に顧客サービスの意識を持ってもらうことに苦労したという。「学術業務からカスタマーサービスへというパラダイムのシフトが必要だった」(熊澤センター長)という。

 GSKでは今年に入り、カスタマー・ケア・センターに新しい業務が加わった。フィールド・ケア・センターという部隊だ。

 同社ではここ数年、営業拠点におけるMRの支援業務を集約するという作業を進めてきた。その結果、総務関連の電話窓口を今年から東京の本社のみにした。全国のMRは総務関連の手続きを自分の所属する支店ではなく、東京本店の窓口に電話してすませることになる。コールセンターを核にしたシェアードサービスといえる。

 GSKでは今年に入り「プロフェッショナルコールセンター」というスローガンを掲げている。製薬メーカーが一歩遅れていたコールセンターという分野の強化を糧にさらなる成長を目指す。