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フィオナ・ マックマスター氏 写真:佐藤久 |
「アジアパシフィック地域の政府においても、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)は注目されている」──IBMアジア・パシフィックサービスの公共部門担当副社長のフィオナ・マックマスター氏は、本誌との会見でこう語った。EAとは、組織全体の視点から業務やシステムの設計図を作成した上で、それに基づいて業務やシステムを構築するための手法のこと。米国では1996年に連邦政府の各機関に対してエンタープライズ・アーキテクチャ導入を義務付ける法律が制定されている。日本においても、全府省においてEAに基づいてIT投資を効率化しようという計画が立てられている(EAの説明については「電子自治体キーワード」より抜粋)。
各国によって細かい事情は異なるが、EAが注目される背景には4つの要因があるとマックマスター氏は説明する。(1)財務面(財政・金融状態の逼迫)、(2)高齢化社会への対応(高齢者にサービス行うためのスキルを持つ職員不足)、(3)国民の期待の高さ(電子政府に民間と同等のサービス、セキュリティレベルを欲している)、(4)外部の脅威(テロ、SARSなどについての対策)である。電子政府は、システムの設計、実装、管理、そして、よりよいものにしていくためのやり方を頭に入れていなくてはならず、そのためには全体最適を実現するためのEAが必要になるというわけだ。
マックマスター氏はEAの特徴について次の二つを挙げた。まず、電子政府化がどこの段階にあっても適用できること。「電子政府になる最初の段階でもEAで土台・枠組みを作れる。その枠組みの中でプロジェクトを実施できるようになる」(マックマスター氏)。そして、EAによって枠組みが決まっていれば、政府、ベンダーいずれの担当者が変わっても適切にプロジェクトを遂行できることが、もう一つの特徴だ。マックマスター氏は「ガバナンスモデルをEAで定義し、実際にどういった成果が見込めるのか、実装の計画があるのか、どういった統治のモデルがあるのか、それがEAで定義つけられていれば担当者が変わっても問題ない」とした。
そして、EAを進めていくには、組織全体のIT部門を統括するCIO(最高情報責任者)の存在は不可欠だが、CEO(最高経営責任者)つまり、政府なら大臣や事務次官レベルの理解がないと話が進まない、とマックマスター氏は続ける。なぜなら、ここで言うガバナンスモデルというのはITだけでなくビジネス(政府の場合は政策)全体を含めた形のモデルであるからだ。マックマスター氏は「EAのコンセプトは、何もインフラ、データ、アプリケーションといったレベルだけを見てるのではなく、ビジネスのアウトカムを理解し、れぞれをうまく結びつける方法論がEAとなる。そして、実際にプロジェクトが走っていくうえでEA随時管理できる」と締めくくった。(黒田 隆明=日経BPガバメントテクノロジー)