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 「内部統制の考え方は、トヨタ生産方式と極めて近い」。トヨタ自動車の山口千秋 常勤監査役は7月21日、SAPジャパンが主催するカンファレンス「BUSINESS SYMPOSIUM '06」でこう語った。『品質は工程で造りこむ』『自働化』『見える化』などのキーワードで表現されるトヨタ生産方式は、業務全体の流れを“見える化”し、その成果を組織全体で業務の効率化や財務報告の信頼性確保、コンプライアンス(法令順守)に生かす内部統制への取り組みと共通する、というのが同氏の主張だ。

 「内部統制に対しては、“攻め”の意識を持つことが大切」と山口監査役は話す。「これまで生産に比べると、事務や技術開発などの分野における生産性や品質向上への取り組みは遅れていた。内部統制の確立に向けた作業によって業務全体を見える化し、さらにPDCAサイクルを回してレベルアップを図ることで、生産以外の分野での生産性や品質向上につなげていきたい」。

 山口監査役は、「内部統制への取り組みは、グループ経営とグローバル経営の推進にも役立つ」と話す。例えば、これまでは子会社の経営については自主性を尊重する方針を採ってきたが、「それでは済まなくなってきた」。「多くの異なる文化を持つ従業員に分かってもらえるフェアなルールを作り、それに沿って経営していくことが重要」になる。そのために、内部統制の仕組みが役立つとみている。

 ただし、また解決すべき課題も多い。その一つが、責任範囲の問題だ。「失敗しても個人の責任を問わない、という文化は欧米の人には分かりにくい。これを海外の人にも理解しやすくするするとともに、いかに社員がチャレンジしやすい環境を残すか。これは大切な課題だとトップも認識しており、試行錯誤しながら取り組んでいる」。

 山口監査役は、内部統制への取り組みを成功させるポイントを四つ挙げる。(1)経営トップ自身が強いリーダーシップを発揮する、(2)組織全員が参加し、内部統制を構築・運用していく、(3)内部統制の仕組みを作り上げることは、終わりではなくむしろ「始まり」。その後、カイゼンを重ねることが大切、(4)内部統制の仕組みは行き着くところ“人”がかぎになる。従業員全員の不断の努力が必要になる。