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 伊藤忠商事とオリエントコーポレーション、みずほグループが今年4月に出資・設立した新会社アスクラスLSA(東京・港区)は、全国の工務店を組織化し、支援することでリフォーム業界に参入した。加盟店はこの7月から本格的にリフォーム事業を開始した。アスクラスLSAは、システムやブランドの構築を本部が請け負うというシェアード・サービス形式で5年後に加盟店取扱高2000億円を目指す。

 昨今、住宅リフォーム関連の悪徳業者による被害がよく報道されている。その理由についてアスクラスの仲原大輔・経営企画部長は「住宅リフォームの業界は新規に参入しやすく、技術力がない会社も少なくない」と指摘する。そこで同社では新築を手がけている技術力の高い工務店を加盟店として組織化することに乗り出した。一定レベルの技術を持つ加盟店を集めることで消費者の信頼確保を狙う。

 しかし、こうした技術力のある加盟店は、リフォームにおいて重要な顧客とのコミュニケーション力が欠けていることが少なくないという。「新築の工務店の人間は職人気質」(仲原部長)の人が多いからだ。アスクラス本部から接客のノウハウとコミュニケーションのツールを提供するという。コミュニケーションのツールとして「今日のシェフはパパ!」「耐震で安心」「77歳のリフォーム」といったシンプルなキーワードでリフォームのコンセプトをまとめたカタログやホームページを用意している。接客に関しては、各工務店で接客を担当するアスクラスコーディネーターを本部による研修で育成する。

 さらにIT(情報技術)インフラでもアスクラス本部が加盟店をバックアップしていく。顧客情報の管理や見積もり、契約に関する事務処理を行うシステムをASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)形式で提供していく。これまでに40社の加盟店がアスクラスに加盟している。同社では「初年度に100社」という目標を掲げている。

 矢野経済研究所によると、2004年の住宅リフォーム市場規模は、前年比7.8%減の6兆3000億円だが、2010年には17.0%増の7兆4000億円、2020年には42.4%増の9兆円と推測されている。小規模な工務店がひしめく業界において組織化とブランド認知を上げることができれば、市場の成長はアスクラスに追い風となる。

 伊藤忠とオリコは昨年4月に戦略的資本提携を結んでいる。10月に伊藤忠内にリフォーム事業設立準備室を設立し、両社から数人ずつが参加していた。「両社にとって本業以外での合弁事業は初めて」(仲原部長)。伊藤忠は従来、建築資材を扱い、各地の工務店との付き合いはあったが、直接消費者に接することはなく、「消費者の動向は見えなかった」(同)。オリコは住宅リフォームに付随するローンなどでカードの発行も見込める。アスクラスの事業スタートは、提携効果の試金石として注目を集めそうだ。