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品質保証部お客様相談センターの飯田貞年・東京室長
品質保証部お客様相談センターの飯田貞年・東京室長
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 スポーツ用品大手のミズノが顧客からの苦情に全社的に対応する体制を構築しつつある。

 きっかけとなったのは、今年4月に「ISO10002に適合している」と自ら宣言したことだ。ISO10002は苦情対応のマネジメントシステムについての国際規格。第三者機関による審査が求められないため、定められた内容をクリアしたと判断したら自己適合宣言という形を取ることになる。金銭的な負担は少ないため中小企業でもやる気さえあれば取り組みやすい。スポーツメーカーではミズノが初だという。

 ミズノでは年間4万件以上の問い合わせがある。担当者によって対応の仕方やスピードが異なっては会社に対する信頼低下につながってしまう。また問い合わせが商品開発やサービス向上に活かされなければ同じ苦情が繰り返し来ることになる。顧客に対する公平性と企画部門へのフィードバックの強化が苦情対応システムのテーマとなる。

 公平性を図るために「苦情対応補償基準」を定めた。苦情対応の仕組み作りの旗振り役を担ったお客様相談センターの飯田貞年東京室長は「きちんとした統一のルールがなければ、声が大きいお客様に対しては過剰にサービスするなんてことも起こりかねない」と指摘する。フィードバックの仕掛けとなるのは「お客様の声データベース」だ。問い合わせや苦情の内容を全社員に公開し、情報共有を図っている。

 ミズノの苦情対応システムの構築は2002年に一度、取り組んだが進展なく終わっている。飯田室長は「本格的な苦情対応システムの構築に取り組もうと思ったら、自分たちの首をしめかねなかった」と当時を振り返る。

 尻込みするプロジェクトメンバーを後押したのが2004年7月のゴルフクラブ「インテージ」の無料回収であった。一部の商品でドライバーのヘッドに取り付けていたマグネシウム部位に接着の不具合が見られたのだ。「このときにデータベースがあれば(無料回収の)ジャッジももっと早かったかもしれない」と飯田室長は話す。

 苦情対応の仕組みは顧客の電話やメールを受けるコンタクトセンターやお客様相談室だけの努力では向上しない。製品に関する対応は各部門の協力や判断が必要な場合も少なくないからだ。ミズノでは火曜日に全社に流されるビデオ放送を通じて協力や理解を呼びかけたり、部門長や現場リーダーへの説明を繰り返したという。

 今では苦情のレベルに応じて柔軟に解決策を話し合う複数の会議が社内で設けられており、苦情対応はお客様相談センターだけの仕事から全社的な取り組みへと変わっている。自己適合宣言から4カ月たった。「急に成果が出るものでもない。苦情対応におけるPDCA(計画-行動-検証-見直し)を繰り返しながらスパイラルアップを目指したい」と飯田室長は話す。