サイベースは8月30日,RDBMSの新版「Sybase Adaptive Server Enterprise(ASE) 15」を9月15日に出荷開始すると発表した。2001年に出荷したASE 12.5から,およそ5年ぶりのメジャー・バージョンアップである。RDBMSの心臓部に当たる「クエリー・オプティマイザ」を刷新し,“数日分の情報系データを高速にレポーティングしたい”といったニーズに応えたことが特徴。価格は,Windows/Linux版が62万4000円(1プロセッサ・コア)~,UNIX版が149万9000円(同)~。
ASE 15の開発コンセプトは,「大量の情報系データを高速処理できるように性能向上を図ることにあった」(セールスエンジニアリング部 部長 花木敏久氏)。これまで,同社のRDBMSは「トランザクション処理が中心の基幹系はASE」,「OLAPなどが必要な情報系はSybase IQ」と住み分けてきた。ところが,「短いレンジの情報系データをASEで分析したいというニーズが,金融業界のユーザーの最大公約数として上がってきた」(花木氏)。売上データを分析する場合,1年単位の比較はSybase IQに蓄積して行えばいいが,昨日と今日の比較はASEで行いたい,といったケースが一例だ。ASE 15は,こうした“近過去”の情報系データを大量処理することを想定して,パフォーマンスを引き上げた。
機能強化点は主に三つある。まず,(1)ASE 12.5に比べて大量にデータを格納できるようにした。次に,(2)大量のデータを高速処理するためにパーティション機能を取り入れた。最後に,(3)クエリー・オプティマイザを刷新した。(1)は,「VLSS(Very Large Server Support)」と呼ぶ機能で,データベース・サイズの上限値などを引き上げた。例えば,データやインデックスなどを格納するディバイス(ファイル)の数は,ASE 12.5では256個が上限だったが,ASE 15では事実上無制限(214億個以上)にした。
(2)では,「スマート・パーティション」と呼ぶパーティション機能を加えた。テーブル上のデータを論理的な塊(パーティション)に分割して管理,処理することで,処理速度が向上できる。例えば,1カ月の売上データを格納したテーブルを,1週間ごとのパーティションに分割しておけば,ある週を検索した際に,不要な週のデータにアクセスする必要がなくなる。スマート・パーティションは,分割したデータに合わせて,インデックスもパーティションとして分割することができる。
(3)のクエリー・オプティマイザは,アプリケーションが発行したクエリー(SQL文)を受け取り,実行計画を作成する機能を担う。ASE 15ではクエリー・オプティマイザのソースコードを全面的に書き換え,「LAVAクエリープロセッサー」として高速化を図った。パーティション・データに対応したほか,ジョイン(JOIN)のアルゴリズムを増やすなどした。ソースコードを書き換えたといっても,ASE 12.5の方法論は受け継いでいる。そのため,「従来と同じようなトランザクション処理は,少なくともASE 12.5と同等のパフォーマンスが出る」(花木氏)という。
アプリケーション開発を支援する機能も加えた。ディスク上のデータをカラム(列)単位で暗号化する機能を,オプションとして提供する。また,あらかじめ指定したカラムに対して四則演算を行い,その結果カラムを作る「計算カラム」などの機能も新たに加えた。
運用管理を支援する機能も強化。ASEは,スケジューラ機能を備えており,イベントやタイマーによって任意の処理を起動できる。ASE 15では,「XX時に統計情報を更新する」「空き領域がXX%以下になったらバックアップを行う」といった,テンプレートを用意した。また,クエリーごとの実行時間や論理/物理のI/O回数といった情報を取得できるようにすることで,性能劣化に伴う調査などを支援する。
ASE 15は,「共有ディスク型クラスタ」への対応が予定されている。そのアーキテクチャはOracleのRAC(Real Application Clusters)に近く,複数ノードを同時にActive状態で用い,データベースの性能および可用性の向上を図る。このオプション機能は,「第1ステップとして可用性を,第2ステップとしてロードバランスによる性能向上を,それぞれ重視して段階的に提供する。第1ステップは2007年を予定している」(花木氏)という。