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 「データベース事業に関して、もはや当社が失うものは何もない。しかも、データベースはコモディティ化する一方。事業を強化するには、思い切った策を講じるしかない」。サイベースの早川典之社長は8月30日、エンタープライズ向けRDB(リレーショナル・データベース)の新版「Adaptive Server Enterprise(ASE)15」の発表会で、こう語った。

 1990年代のクライアント/サーバー・システム全盛時代に、サイベースはオラクルやインフォミックス(IBMが2001年に買収)とともに主要なオープン系RDBベンダーとして知られていた。現在でも、「3大証券会社や大手ネット証券、都銀系など、主要な金融機関のほぼすべてで利用されている」(早川社長)という。だが現状では、オラクルに圧倒的に差を付けられている上に、PostgreSQLなどオープンソースRDBの台頭もあり、RDBベンダーとしてのサイベースの存在感は薄い。

 今回、サイベースがデータベース事業のテコ入れ策として新たに打ち出すのは、パッケージ・ベンダーに対し、同社製品をパッケージに組み込んでもらうよう提案すること。主な対象として、中堅・中小企業を対象とした会計や人事などの業務パッケージやERPパッケージ(統合業務パッケージ)を開発・販売する国産ベンダーを想定している。「アプリケーション・パッケージに組み込んだ形でデータベースを提供すれば、その企業がオラクルなどのRDBを使っている場合でも、当社製品を利用してもらえるようになる」(早川社長)。

 同社はこの構想を推進するにあたり、ASE15の開発版であるDeveloper Editionの無償提供プログラムを実施する。ASE15の価格は、Windows/Linux版が62万4000円から(1プロセサ・コアあたり)、UNIX版が149万9000円から(同)。Developer Editionでは、通常版と同じ基本機能と、オプション機能のほとんどを利用できる(1CPUあたり最大25接続までという制限がつく)。同社はこのDeveloper Editionを100セット限定で無償で提供し、パッケージ・ベンダーに対して同社製品の利用促進を図る。「パッケージに組み込む際のライセンス料金についても、柔軟に対応していきたい」と早川社長は話す。

 ほぼ5年ぶりのメジャー・バージョンアップに当たるASE15では、(1)テラバイト規模のデータベースを実現可能にした、(2)アプリケーションの修整なしにカラム(列)単位でデータを暗号化できるようにするなど、セキュリティ機能を追加、(3)SQLによる問い合わせ処理を高速化、などの強化を図った。9月15日に出荷を始める。パッケージへの組み込み用途に加えて、金融関連を中心とする新規顧客の獲得も狙っていく。Developer Editionの無償提供プログラムについては、9月中に同社Webサイトで詳細を告知する予定だ。