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 「ゲーム産業は第2ステージに入った。いまこそ質的に変化するべき時だ」。ゲームの業界団体であるコンピュータエンターテインメント協会(CESA)の会長,和田洋一氏(スクウェア・エニックス社長)はこう壇上で訴えた。8月30日から開催中のゲーム開発者向け会議「CESAデベロッパーズカンファレンス(CEDEC)2006」の基調講演で,和田氏はゲーム業界の現状と将来進むべき方向性を,ゲームに携わる開発者らに提示した。
 
 まず和田会長が示したのは,ゲーム業界にある将来への危機感をうち消す見解だ。家庭用ゲーム機やパソコン用ゲームなど各種の市場調査データを見せつつ,世界のゲーム市場は依然として成長過程にあると分析。「欧米に比べて日本市場が伸び悩んでいるように見えるのは,日本で先にゲーム市場が立ち上がったから。日本が先に落ち着き,欧米が最近伸びているのは当たり前のこと。データの表層だけを見て危機感をあおるのは間違っている」(和田会長)。

 ここ数年で急速に伸びてきたオンライン・ゲームや携帯電話用ゲームなど,新ジャンルの勃興を考慮すると,「ゲームの作り手にとっては,依然として成長する魅力ある市場」と和田会長は力説。「ゲーム産業は日本のコンテンツ産業の中で圧倒的なまでの国際競争力を持っている。力をつければ,まだ大きなチャンスがある」。

 一方で和田会長はゲーム業界に変革を促す。「これまでのコアなゲーム・ユーザー層である20代だけでなく,30代からはたまた50代,60代にも,これからゲームに触れてみたい,という人がたくさんいる」。従来型のゲームの延長線だけでなく,多様なライフスタイルやニーズに合わせた新しいゲームを考案し提供すべきと訴える。

ゲーム業界の成果はネット・サービスやIT産業にも波及

 和田会長はゲーム業界で生まれた成果が他産業に波及していると語る。「映画のCG作成はもちろんだが,Webサイトのサービスや教育用コンテンツは,ゲームの表現手法から学んでいる。ユーザーの主体性の喚起,楽しさの演出,継続したいという気持ちの引き出し方は,ゲームが編み出した大きな成果」。

 「この20年,30年間でゲーム業界は産業として確立した。ゲーム業界を第2の成長ステージへと飛躍させるためには,ゲームを取り巻く状況を正しく認識し,業界内外でその認識を共有する必要がある」と和田会長は結んだ。