![]() 写真右から2人目が手塚文課長。4人の子供は合計7人。営業でも育児でも第一線にいる [画像のクリックで拡大表示] |
人材派遣大手のリクルートスタッフィング(東京・千代田)が、産休から復帰した女性社員だけで構成した営業部隊を今年4月に組織した。幼児を抱える女性社員は通常、営業職に戻るのが困難。様々な営業の業務から残業時間が少ない業務を切り出して、同じ境遇の社員を集めて任せることで助け合うという試みだ。
リクルートスタッフィングでは2000~2001年にかけて様々な人事制度の改革に取り組んだ。その1つが「V職制度」。VはVariationを指し、多様な働き方を支援するものだ。V職には「介護V職」と「育児V職」の2種類あり、対象者は期間中の勤務時間と給与が通常の8割となる。育児V職の場合は、産休明けの社員と小学1年と2年生の子供を持つ社員が対象だ。期間は最長で2年間。
一度、V職になっても復帰後の管理職への道は開かれている。同社の総務部人事課の松野あゆみ人事課課長は、育児V職を「育児と仕事の両立を支援する期間」と説明する。実際、育児V職空けの女性社員3人を率いることになった手塚文ビジネスソリューションディビジョン市場開発部営業推進課課長も、今年2月末にV職から通常のフルタイム業務に復帰したばかり。
市場開発部の営業推進課は、今年4月の組織改変で誕生した新しい部署。派遣の要請があった新規顧客に対する提案営業が主な仕事となる。既存顧客とのやり取りが中心の部署だと残業が多くなりがちだが、インバウンド営業ならばある程度、スケジュールが調整しやすいという。
それでも営業は顧客があって成り立つ仕事。どうしても顧客の都合に合わせざるを得ない。営業部隊に1人だけV職社員が混ざっているとその周りの社員に負担をかけることもある。周囲が気にしなくても本人は心苦しい。その点、V職の社員だけの部署を作れば、短めの勤務時間や急な休みでも「お互い様」ということになる。手塚課長自身がV職経験者だから理解もある。
同じ苦労を抱える社員同士の情報共有も進んでいるという。例えば、市場開発部ではグループウエア「ビジネスgoo」を今年4月に導入しているが、携帯電話から各メンバーのスケジュールを確認する機能などを一番使いこなしているのが営業推進課だという。「短時間で効率良く働くためのちょっとした知恵やノウハウを共有できるようになる」とママさん営業部隊の発案者である花木紀好BSDV市場開発部部長は話す。ただし、幼児を抱える母親ならではの悩みもある。風邪などが流行る時期には子供がそろって熱を出すこともある。事実、全員が同じ日に休むこともあったという。その後、こうした事態に備える意味もあってV職中ではない社員1人が加わった。
「会社には働きやすい環境を作ってもらい感謝している。限られた時間の中で生産性をあげて恩返しをしていきたい。課のみんなは後に続く後輩のためにもがんばらねばという気持ちが強い」と手塚文課長は語る。「モチベーションは高く営業成績はすばらしい」と花木部長は自信を深めている。