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システム刷新を指揮する執行役員の
木下恒男情報システム部長

 日本旅行は8月、国内旅行部門の基幹システムを刷新した。今年度中には海外旅行部門の基幹システムも刷新する。

 34年ぶりの刷新で、投資額は合計で20億円。新システムはホテルの部屋などの商品の仕入れから販売までのあらゆる情報を一元管理できる。紙で運用していた業務も電子化し、部門を横断して情報共有することで業務の効率化を図る。

 従来は、宿泊施設や観光施設といった仕入先約1万社からファクスで届く情報は、紙で管理していた。宿泊施設は、1部屋あたりの宿泊数によって料金が異なるなど非常に複雑。届いた情報を日本旅行の担当者が、システムに登録しなければならなかった。新システムを機に、仕入先が情報を直接登録してもらう体制に切り替える。キャンペーンなど仕入先から届く情報を漏れなく常に最新に更新できる。

 この商品情報を売り上げ拡大にも生かす。商品情報が入るデータベースと2004年に稼働した顧客情報が入ったシステム「eカルテ」を連携。支店の営業担当者が、顧客のニーズに合った商品を薦められるようになる。

 ツアー数は、宿泊日数や施設などによって異なるため、「海外旅行で20万以上。国内はそれ以上にもなる」(執行役員の木下恒男情報システム部長)。営業担当者は膨大なツアーの中から調べなければならなかった。商品情報と連携することで「過去、秋に○△旅館に宿泊」といった顧客に対して、興味を持ちそうなプランを営業担当者の端末で一覧表示できる。

 情報を一元化することで、パンフレット製作など部門を横断した業務も効率化できる。商品企画担当者がツアーを企画して、パンフレット原稿を発注していた。完成までに、仕入れ量の変動などにより料金が変更することがあるなど細かい修正点があり、反映し切れないといった課題があった。

 新システムのデータベース内に版を一元管理することで、各部門の担当者が変更しても確実に反映できる。一度作ったパンフレット情報は蓄積されるため、今後同様のプランを作成する際には再利用できる。6~7割は過去のものが使えるため業務が効率化する。

 さらに、情報が一元化することで情報の鮮度が向上するため、本部の意思決定の速度も早まる。これまでホストコンピュータから1週間に1回収集していた。担当者が欲しい切り口で簡単に情報を分析できる環境にはなかった。新システムでは日次で情報が手に入る。全国の販売実績がすぐに把握できることで、ツアー料金の値下げなど柔軟に対応ができる。

 今後、支店長には自店の商品別の売れ方の分布など売れ行きを把握できる仕組みなどを提供する予定。「ウェブサイトと融合して、出発間際のプランを売り出すといった動きが取れるようにしていきたい」と木下システム部長は意気込む。