「経営情報化サミット2006」(日経情報ストラテジー主催:9月6日開催)では,リコーの遠藤紘一・取締役専務執行役員が「持続する成長を目指したリコーの構造改革」と題して,これまでの改革の成果を披露した。
リコーは,1992年まで10年おきに経営危機に陥っていた。それが経営革新を絶えず続けていかなければならない要因だったと話した遠藤氏。その中で,「IT(情報技術)が経営基盤を強くするための大きな役割を果たしている」と指摘した。
改革の事例として,SCM(サプライチェーンマネジメント)改革を挙げた。
主要な部品メーカーとリコーが強固な信頼関係を結ぶことで,部品を共同で開発して改善できる環境を整えた。それを下支えするのが,フューチャーシステムと呼ぶ情報共有するための仕組み。
同システムで2年間の技術的な情報を共有し,量産を開始するころにはいくらで調達できるのかが分かる。開発の構想段階から量産時の実勢価格と部品の性能を把握できるため,先取りした内容を設計に盛り込めるという。
それまで電子部品の選定は,設計試作段階から行っていたため量産した後も目標のコストにたどりつかなかった。加えて,部品の供給を打ち切られることもあり,買いだめしたり代替部品を調達するなどコスト削減できない一因だった。とはいえ,販売できる期間も長かったため,量産しながらコストダウンを図る余裕があった。
しかし,デジタル時代に入ると商品サイクルが短くなり,早くからコスト削減のメドを立てる必要性が高まってきた。
部品メーカーと共同で仕様や図面を作って課題解決に当たるため,部品数の削減にも貢献している。ベアリングは1998年には3019種類使われていたが,2003年には185種までに集約。スイッチやセンサーなども平均15%集約できているという。主要な取引先も1998年に302社あったが,2004年度には217社まで集約した。
遠藤氏は,「継続して改善し,レベルアップしていくには,取引先の協力が不可欠。どちらか一方だけが儲けてはだめで,リコー,サプライヤー,顧客すべてが満足するWINの3乗でなければならない」と語った。
また,業務改革に対する考え方にも言及した。なぜ問題が起きているか考える前に,何が起こっているのかきちんと把握すべきだと説く。遠藤氏はこれをTTY(whaT Then whY)と呼ぶ。複雑に問題を解くのではなく,やさしく問題を解くことが重要だという。
「そのためには何が問題なのか見える状態にまで因数分解する必要がある。そのためには経験則ではなく,現場・現物に即して取り組まなければならない」
さらに,問題の大きさをABC分析した場合,問題の小さいCから取り組むべきだと話す。「問題の大きいAは成果は大きいものの,できない理由を並べてしまう。Cであれば1つ当たりの成果は小さいものの,小さな経費で済み,全員で取り組めるため着実に成果が出る。小さな成果も積み上げれば大きくなる」と講演を締めくくった。