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 パフォーマンスや安定性はほとんど問題なし,ディスクI/Oやネットワークの仮想化などが今後の課題。それからアプリケーション側のサポートが不可欠である。ITproフォーラムの最後のプログラムであるパネル・ディスカッション「先進事例に学ぶ仮想化の効用と今後の期待」では,このような現実が見えてきた。

パネル・ディスカッション「先進事例に学ぶ仮想化の効用と今後の期待」

 パネリストは,IMJネットワーク 代表取締役 山田 敏博氏,NEC マネージドプラットフォームサービス事業部 プラットフォームソリューショングループ シニアエキスパート 高橋 幸雄氏,NTTデータ 基盤システム事業本部 仮想化ビジネスプロジェクト プロジェクトマネージャ 斎藤 洋氏の3人。インテグレータやサービス・プロバイダであるが,ヴイエムウェアの仮想化ソフトウエア「VMware ESX Server」の先進ユーザーとして登壇した。モデレータは,日経BP社ITpro発行人 浅見 直樹。

リソースの柔軟性,サーバー統合など,活用は始まっている


IMJネットワーク 代表取締役 山田 敏博氏

NEC マネージドプラットフォームサービス事業部 プラットフォームソリューショングループ シニアエキスパート 高橋 幸雄氏

NTTデータ 基盤システム事業本部 仮想化ビジネスプロジェクト プロジェクトマネージャ 斎藤 洋氏
 ディスカッションは,モデレータの浅見の「ユーザー企業に提案するなかで,身を持ってユーザーとして導入した仮想化システムは?」という質問で始まった。

 IMJの山田氏は,同社が提供するレンタル・サーバー・サービス「GrowServer」でVMware ESX Serverを利用している例を挙げた。「超高層マンションのような大きなハードウエアのなかに,仮想的に部屋を作り,豪華な設備を安くユーザーに提供するために利用している」という。マンスリー・マンションのように柔軟性高く自由な間取りを使えることも特徴とする。

 「社内に散在する部門サーバーを仮想化で統合した」というのはNECの高橋氏。各部署がそれぞれ運用していたサーバーを,VMwareを使って統合している。「情報セキュリティの確保」」「内部統制」「事業継続への対応」が目的という。また,「アタック25」と銘打って進めているIT関連の費用を25%削減する活動の一環でもある。「部門にサーバーが“ころがっている”状態では,情報をきちんと管理できないし,運用コストがかかる。それに運用品質もばらつきが出る。こういった課題解決のため,仮想化技術を採用した」という。「集中管理やプラットフォームの統一などが実現され,当初の目的が果たせている」(NECの高橋氏)。

 NTTデータでは,「サーバーの統合」「パッケージ・ソフトウエア開発時のテスト」「シン・クライアント」の三つの用途でVMwareを利用している。三つ目のシン・クライアント・システムには「情報漏えいを防ぐのが目的」(NTTデータの斎藤氏)である。「1台のマシンに複数のOSを載せられるというと違ったOSと思われるかもしれないが,ここに同じWindows XPをいくつも並べて利用している」(NTTデータの斎藤氏)。実際サーバー1台あたり15~20のXPを入れている。ディスクレスのシン・クライアント端末を導入し,XPが備えているRDP(Remote Desktop Protocol)を使って仮想サーバーへアクセスするというシステムを構築。2拠点200人くらいで利用しているが,運用上のトラブルはないという。

 NTTデータの仮想サーバー(CPU)の利用率は,平均60%弱で,ピークでも100%未満で安定して稼働しているという。ただ,当初,サーバーがパンクしたことがあるという。これは「アンチウイルス・ソフトのデフォルト設定では,金曜日の20時に,パターン・ファイルのチェック,更新をするようになっていた。このため,サーバーにアクセスが集中した」(NTTデータの斎藤氏)のが原因である。

 VMwareの導入によって,運用コストの削減,システムの立ち上げ/変更などに要する時間短縮など,確実に効果が出ているという。「30台のサーバーが1台になるわけで,ソフトウエアのインストールなど,大幅に効率が向上した」(IMJの山田氏)。リード・タイムが大幅に短縮できたというのは,NECの高橋氏。「従来,ハードウエアの調達など,システムの立ち上げまで,早くても3週間くらいかかっていたのが,設定までを含めて2~3日で済むようになった」(NECの高橋氏)。

CPUパワーは満足,しかしディスクI/Oやネットワークが...


日経BP社 ITpro発行人 浅見 直樹
 3社とも順調に稼働しているようだが,「導入時に不安はなかったのか?」(ITproの浅見)と問いかけた。これに対して3人とも「パフォーマンスや安定性に不安があった」と口をそろえる。しかし,実際に運用してみると,ほとんど問題がなかったという。

 NECの高橋氏は,運用面でも不安があったという。「仮想化したときに,通常の監視ツールが使えない。VMwareはそれ自体がOSみたいなもの。それに対応したツールが必要になる」(NECの高橋氏)。ヴイエムウェアが提供する監視ツール「VirtualCenter」を利用して,基本的な運用管理ができている。「リソースの配分というよりも,負荷の高いサーバーから負荷の低いサーバーに処理を移すという運用をしている」(NECの高橋氏)。

 運用面についてIMJの山田氏は,「対応できる要員が不足している」という不安を訴える。キャパシティ管理など,システムの高度化にまだ追いついていない」(IMJの山田氏)。

 パフォーマンスについて「仮想化によるオーバーヘッドは,5~10%くらい」と実用上問題がないと語る一方,ディスクI/Oやネットワークがボトルネックになったと声をそろえる。例えば,NTTデータの斎藤氏は,「インテグレータの立場で,ユーザー企業に説明するときは2割と伝えている」という。データベース・サーバーのようにディスクI/O処理が多いような処理では,パフォーマンスが低下するというのが実情。

 また,NTTデータの斎藤氏は,「なにかトラブルが発生すると,まっさきに仮想化技術が疑われる」と嘆く。当初ソフトウエアが「本当に動くの?」という不安があるが,動かしてみると問題なく動きユーザーは安心する。しかし,トラブルが発生すると,仮想化技術が犯人となってしまう。仮想化技術前でも,PCがフリーズすることはときどきあるはずだが,新しい技術が疑われるということである。

 ITproの浅見は,「取材しているなかで,リソース共有に対する不安を聞く」と問題提起する。仮想サーバー上でリソースを共有しているため,ほかの部門などのシステムで起こったトラブルの影響を受けることを恐れるユーザーは多いというのだ。

 これに対してIMJの山田氏は「確かにそういった声はある。リソース共有によるメリットを評価しなければ,ブレード・サーバーを別に用意するという対応を採っている」という。NTTデータはユーザー向けには「基本はシェアだが,コストがかさむが希望があればオプションとして占有システムを用意している」という。

 「3社とも仮想化で,大きなトラブルはなかったようだが」(ITproの浅見)という確認に対して,NTTデータの斎藤氏は注意を促した。「仮想化技術すべてが安定しているというのは早計。VMwareという枯れた技術,製品だから安定している」(斎藤)と。

アプリケーション側の対応などに今後の課題

 ディスカッションの最後のテーマは「仮想化技術への未来の期待」(ITproの浅見)である。NTTデータの斎藤氏は「自動化,自律化」を挙げた。インテグレータはもちろん,ユーザーでも自由に使いこなせるようになってほしいということである。「現在はまだ,ユーザーが簡単にメリットを享受できるようになっていない」。いかに簡単に使えるようになるかが,普及のカギであるという。

 また,「ソフトウエア・ベンダーがサポートするかどうかの態度が決まっていない」(NTTデータの斎藤氏)ことが,仮想化技術の普及の障壁になっている。動くのかと聞くと,ベンダーは「動く」と答える。しかし,なにかあったらサポートするかとことを「わからない」「しない」「検討していない」と返ってくるという。これではなかなか前に進めない。この課題が解決しないと,安心して仮想サーバーを使えない。

 NECの高橋氏が期待するのは,「ディスクI/Oやネットワークなども含めた全体的な仮想化技術」。ディスクI/Oなどは緒についたばかり。これが成熟してくれば,TCO削減に大きく貢献するとみる。

 「インパクトあるのはマルチコアだ」(IMJの山田氏)という。現在,CPUに起因する制限があるが,これがマルチコアになると解決する。また,同氏は「10年間ノンストップのシステムを目指しており,そのためには互換性の問題がある」と指摘する。OSレベルでの互換性はかなり進んでいるが,上位レベルのアプリケーションや言語となると遅れている。バージョンが上がったりして,1~2年で互換性がなくなってしまうというのだ。

 最後に,ITproの浅見は「ITproでは,仮想化は今後も注目すべき技術である。これからも仮想化,特にユーザー事例をこれからも追いかけていく」と締めくくった。