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SCM改革推進部の若月新一グループマネージャー

米沢事業所の生産ライン
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 パソコンを製造するNECパーソナルプロダクツ(東京・品川)の米沢事業所が、トヨタ生産方式を活用した生産革新に取り組んでいる。

 法人向けのパソコンでは、受注から納品までのリードタイムと在庫を大幅に削減。リードタイムは、1997年時点で10日かかっていたものが、2005年には3日まで短縮できた。製品在庫も半減した。店頭に並ぶパソコンでも、生産計画を立案してから出荷するまでの期間が2.5週から1週間へと短縮している。

 こうした改革の背景には、パソコンの需要変動が激しいことがある。ボーナス期など年に3回も大きな商戦期があり、出荷量では最大2倍の開きがある。商品サイクルも3~4カ月と短く、市場と連動したモノづくりが必要だった。

 そこで、需要の変動に対応できるように、ベルトコンベヤーによる流れ生産から、60の屋台によるセル生産体制に切り替えた。この生産体制に、2000年からトヨタ生産方式の考えを取り入れた。工場内の「標準時間」を30分に設定。部材置き場から組み立てラインに運ぶ「水すまし」が30分で工場内を1周して部材を供給する。これに合わせて、事業所へ部材を供給する取引先メーカーにも、工場内で使用する分だけを随時納入してもらうジャスト・イン・タイム(JIT)方式を採用している。リアルタイムで進ちょくが把握できるように、JIT方式で部品の納入や補充に活用する「かんばん」にICタグを装着している。

 生産ラインの組み立て実績は、従来は1時間単位で集約していたが、ICタグを利用したことでリアルタイムで把握できるようになった。生産工程ごとにICタグの情報を読み取り、基幹システム「VCM」に集約する。生産進ちょくの「見える化」が実現できるため、計画に対する遅れへの対応が迅速になった。計画よりも進ちょくが遅れたプロセスがあると、班長クラスの社員の端末に自動的にメールで通知する。これによって、生産ラインの組み換えといった対策を早く練ることができるようになった。「すべてのラインの進ちょくが画面上でひと目で分かるため、変更指示が容易になった」(SCM改革推進部の若月新一グループマネージャー)という。

 生産ラインでもICタグを活用している。紙の作業指示書にICタグを取り付けたのである。企業向けのパソコンでは、CPUなどの部品やインストールするソフトウエアの違いによって2万種類以上のモデルがある。そのうち、80%は生産台数が10台未満という多品種少量生産である。これまでは、紙の作業指示書をクリアファイルにまとめていたが、紙の取り間違いなどが発生することがあった。そこで新体制では、取り付ける部品など作業内容の情報をICタグに書き込んでいる。組み立て担当者が、ICタグを読み取り機にかざすと、画面上に指示が出るという仕組みだ。

 同社では、ICタグを活用してさらなる効率向上を目指している。今冬をメドに、読み取り機までの距離を長くできるUHF帯ICタグを活用する予定だ。これによって、納入された商品がゲートを通過するだけで、検品作業が済むことになる。既に、3月にUHF帯ICタグを活用した実証実験を済ませており、部材の受け入れや製品出荷業務への活用にメドをつけているという。

 現在は大きな成果を上げた同社だが、ここまで改革が順調に進んでいたわけではなかった。2003年の冬に「改革の中だるみ」ともいえる停滞期に陥った。全社活動として、改革を現場に定着させるために、毎週、役員が現場を回る「現場パトロール」を200回以上実施した。「改革を進めるには現状を否定する力を養うことが重要。目標を着実にこなすためには、幹部が興味を持っていることを示せるかどうかがカギ」(若月グループマネージャー)だという。トヨタ生産方式を根付かせるために、人材育成にも力を入れている。トヨタ流のノウハウを各現場のリーダーに教える「生産革新研修」を実施。これまでに75人が研修を受けた。これらの取り組みによって、現場の改革を企業風土として根付かせることを目指している。