NTTドコモと東日本旅客鉄道(JR東日本)は2006年9月27日、両社が準備している非接触型ICカードの共用リーダー/ライターと共用決済システムに、ジェーシービー(JCB)とビットワレットも参加すると発表した。これにより、共用システムの運用が始まる2007年1月以降、NTTドコモの「iD」、JR東日本の「Suica」、JCBの「QUICPay」、ビットワレットの「Edy」という4種類の電子マネーを、同一のリーダー/ライターで利用できる仕組みが整う(PDF形式の発表資料)。
NTTドコモとJR東日本は、リーダー/ライターの共通化と共同決済システムの構築を、1年ほど前から進めている。2006年10月には、リーダー/ライターと決済システムの運用を担う有限責任事業組合(LLP)を、両社の共同出資により設立する。また、2007年1月をめどに共同決済システムを稼働させて、リーダー/ライターが受け付けた支払い処理を各社のサーバーへ中継できるようにする。この共同決済システムに、JCBとビットワレットも参加することになる。
4社の電子マネーの仕様はいずれもフェリカネットワークスの策定した「FeliCa」方式を採用しており、ICチップの仕様や通信方式などはもともと互換性がある。当面は4社の参加だが、FeliCa方式であればほかの電子マネーに対応することも可能という。なお、リーダー/ライターはJR東日本の子会社であるJR東日本メカトロニクスが開発、製造する。
これまでは各社が独自にリーダー/ライターを加盟店へ設置することで、加盟店やユーザーを囲い込む戦術を採っていた。そのため、リーダー/ライターや決済システムの共用化には消極的だった。しかし、加盟店にとってはリーダー/ライターの導入コストが負担であり、また、レジ周囲の限られたスペースに複数台を設置しづらい。これが電子マネー加盟店の拡大を図る上で障害となっていた。
リーダー/ライターと決済システムの共通化により、加盟店が複数の電子マネーを導入しやすい環境を整える。リーダー/ライターは「10万円を切る価格で提供できる」(JR東日本 常務取締役IT事業本部長の小縣方樹氏)としており、各社のリーダー/ライターを別々に導入するよりは加盟店の初期費用を圧縮できるという。
なお、共通化の対象はリーダー/ライターと決済システムに限られ、営業活動は従来通り各社がそれぞれ展開する。「共用リーダー/ライターを導入した加盟店のすべてで、4社の電子マネーを使用可能になるとは限らない。加盟店の判断によっては、4社のうちいずれか一部とだけ契約するという選択肢もありうる」(JR東日本広報)。会員や加盟店の拡大や囲い込みをめぐる各社の攻防は、共用リーダー/ライターの導入後も続くことになる。