東京エレクトロンデバイスは,NAS(ファイル・サーバー)の手前に設置することでNASに格納するデータを自動的に圧縮・伸長するアプライアンス機器「STN-5000」を,2006年10月3日に出荷した。NASの実質的なデータ容量を増やすことが可能になるという。開発会社は米Storewiz。
STN-5000は,高さ2UのPCサーバーにファイル・アクセス用途のアクセス透過型アプリケーション・ゲートウエイを搭載したアプライアンスである。データ圧縮可能なファイル共有プロトコルはNFSとCIFS。NASとネットワークの間にブリッジ型で設置し,STN-5000のネットワーク・ポートにNASのIPアドレスを割り振って運用する。接続するNASごとに2基のネットワーク・ポートを消費する。クライアントからはSTN-5000がNASに見える。
データを圧縮する単位は,NFSプロトコルおよびCIFSプロトコルで用いるIPパケットのペイロード部分のうち,アプリケーション固有のヘッダー情報を除いたアプリケーション・データ部分である。IPパケットのペイロード全体を圧縮対象とはせず,NFS/CIFSプロトコルの体裁を保ったままデータ圧縮するため,NASやクライアントに影響を与えることなく運用できる。データ圧縮アルゴリズムはLempel-Zivを用いた。
STN-5000の狙いは,データ圧縮していることを意識せずにNASで扱えるデータ容量を増やすことである。このため,STN-5000を介してもファイル・アクセス性能が落ちないようにしている。東京エレクトロンデバイスが実施したデモでは,同一のNASに対してSTN-5000経由でのファイル・コピーと,STN-5000を経由しないファイル・コピーの時間を計測して見せ,STN-5000による性能劣化が少ない点をアピールした。また,データを圧縮していることを意識させないもう一つの機能として,STN-5000経由でアクセスすると,データ圧縮前のファイル・サイズを見せるようにしている。
ユーティリティ・ソフトウエアとして,以下の3種のソフトが含まれる。稼働OSはいずれもWindowsまたはLinux。(1)導入効果(予想できる圧縮率)を測定するソフト「PrediSave Utility」,(2)既存のNASに対してSTN-5000を初期導入する際にデータをあらかじめ圧縮するソフト「Compression Accelerator Utility」,(3)STN-5000が故障するといった非常時を想定し,STN-5000を経由せずにNAS上のデータを伸長するソフト「Revert Utility」---,である。
STN-5000のハードウエア仕様は以下の通り。性能に応じて3モデルを用意している。きょう体はいずれも高さ2Uのラック・マウント型PCサーバーであり,NASおよびネットワーク接続用として複数のギガビット・イーサネット・ポートを備える。(A)下位機種「STN-5000M」は,CPUが1基,メモリーが2Gバイト,ギガビット・イーサネットを6基備えた下位モデルが100Mバイト/秒のファイル・アクセス性能を持つ。(B)下位機種STN-5000Mのうち,CPUを1基,メモリー4Gバイト,ギガビット・イーサネットを10基備えた上位モデルが115Mバイト/秒のファイル・アクセス性能を持つ。(C)上位機種「STN-5000H」は,CPUを2基,メモリーが4Gバイト,ギガビット・イーサネットを14基備え,ファイル・アクセス性能は220Mバイト/秒である。