![]() 東京・渋谷のファッションビル 「SHIBUYA109(渋谷109)」 |
東京・渋谷のファッションビル「SHIBUYA109(渋谷109)」の売り上げが好調だ。この秋は館内の改装効果やメディアへの露出などから、9月の全館売上高が前年同月比で7.6%増、10月は17日時点で同比11%の2ケタ増と、毎月同比2~4%の伸びが続いていた好調な渋谷109にとっても、9~10月は最近になく大きな売り上げの伸び率で推移している。
中心顧客であった女子高生を核とした「ティーンズ系」のファッションから、20~25歳のOL層を対象にした「大人系」のファッションへのシフトが進み、前期の全館実績(テナント売上高)は3期連続で増収増益を達成している。2005年度の売上高は253億円と過去最高で、10年前の売上高と比べると、渋谷109は1度も増床せずに売上高を10年で約100億円上乗せしたことになる。
9月末に改装オープンした地下2階フロアは、長年大きな店舗面積を占めていた雑貨店ソニープラザに坪数を縮小してもらい、代わりにファッションテナントを拡充した。すると狙い通りにOL層の顧客が殺到。9~10月の売り上げ増に大きく貢献した。地下2階への来店客数が増えたことで、規模を縮小したソニープラザも前年並みの売り上げを確保できたため、結果的に改装後に新規出店したファッションテナントの売り上げが丸々上乗せになった。
![]() 渋谷109に出店するテナントの店長たちが集まる月に1度の店長会の様子 [画像のクリックで拡大表示] |
![]() 「特別賞」を受賞した6つの優秀テナントの店長たち [画像のクリックで拡大表示] |
こうした好調な実績が、渋谷109に出店する108店のファッションテナントの店長が月に1度顔をそろえる「店長会」で報告された。10月18日の昼過ぎに開かれた店長会は半期に1度開かれる優秀テナントの表彰式を兼ねたため、通常とは場所を変えて、渋谷109にほど近いホテルの一室で約1時間かけて実施された。店長たちは1時間ほどだけ営業中の店舗を抜け出し、店舗での服装そのままで店長会に参加している。
渋谷109を運営する東急モールズデベロップメント(東京・渋谷)の常務執行役員で、渋谷109の総支配人(全館の店長に相当)である萩原泰章氏は、2006年度の期初に立てた上期(4~9月)の販売計画をクリアしたテナント23店の店長に「達成賞」を、さらには上期売上高の絶対額、坪当たり売上高の前年同期比伸び率、売上高の前年同期比伸び率においてそれぞれナンバーワン、ナンバーツーだったテナント合計6店の店長6人に「特別賞」を授与した。
109ファッションに身を包む派手な外見の店長たちを、見た目で判断してはいけない。店長会で報告されるテナントごとやフロアごとの月間や上期の売上高の数字を見つめる店長たちの目は真剣そのものだ。自分の周りにいる店長たちは皆、同じ渋谷109で競い合うライバルたちなわけで、自店の売り上げが低く、期初の計画に達しなかったテナントの店長は非常に悔しい思いをしている。
ギャル服の「聖地」と呼ばれる渋谷109に出店するテナント店舗は、その会社にとっての基幹店であることが多い。つまり、ここがコケたら会社が立ち行かなくなる恐れすらある。そんな重要な店舗を任された25歳前後の若い店長たちには、重圧がのしかかっている。自ずと売上高の数字を見つめる目は真剣になる。そこに見た目や年齢は関係ない。
クレジットカード比率が109のOLシフトを裏づけ
萩原総支配人はこの日の店長会で、2006年上期に渋谷109の顧客がギャル層からOL層にシフトしていることを示す明確な根拠を、ある数字をもって店長たちに説明した。それは売上高に占めるクレジットカードでの支払い比率の上昇である。今期に入り、クレジットカードの比率が従来の18%から直近では25%まで高まった。つまり、渋谷109の客層がクレジットカードを持たない学生から、クレジットカードで買い物をするOLにシフトしている1つの証拠といえる。
特に、この秋はその傾向が顕著になった。その大きなきっかけになったのが、「NHKのドキュメンタリー番組を見て渋谷109に改めて来店してくれたOLのお客様の影響」と、萩原総支配人は分析する。
9月24日に放送されたNHKスペシャル「東京カワイイ★ウォーズ」を見たと思われるOLが、翌25日以降に渋谷109に買い物にやって来たと思われる。番組では、渋谷109の盛況ぶりやそこで働くテナント店長の活躍が紹介された。すると、しばらく渋谷109から足が遠のいていた若い女性や、これまで渋谷109で買い物をしたことがないOLまでもが、あらためて渋谷109に関心を示した。それが9~10月の売り上げ増に直結したようだ。
だが喜んでばかりはいられない。萩原総支配人は「109の顧客がOLにシフトしているということは、丸井やルミネ、パルコといった近隣のファッションビルと直接競合することを意味する。OLは(ギャルたちのように)圧倒的に109が好きなわけではないので、気を抜くとすぐに他店に流れていってしまう」と言って、店長会に集まったテナントの店長たちを引き締めた。