「企業データをどこからでも活用/更新する,という需要は無くならない。機能拡張の余地はまだまだ多い」---。
組み込み機器やモバイル端末向けにRDBMS(リレーショナル・データベース管理システム)関連製品を投入し続けている企業が,「SQL Anywhere」の開発元である米iAnywhere Solutionsだ。2006年10月31日,WATCOM(後にPowerSoft,Sybase)時代からSQLに関わってきた同社社長のTerry Stepien氏に,SQL Anywhereを取り巻くユーザー企業の需要を聞いた。
---SQL Anywhere(Watcom SQL)のブランド名は,モバイル端末向けデータベースとしての地位を築いている。これまで,SQL Anywhereはどう発展してきたのか,その歴史を振り返って欲しい。Terry Stepien氏: これまで一貫して,ノートPCや携帯端末などのモバイル機器や組み込み機器に対してSQLデータベースを提供してきた。例えば,企業の情報システムから物理的に離れた遠隔地で,モバイル機器に搭載したデータベースにアクセスする,といった使い方をする。企業情報システムの末端であるモバイル機器にまで企業のデータを配布したいという需要に応えるものだ。
当社はこれまで,特にユーザーが求める以下の3つの要件を満たすために取り組んできた。(1)SQL標準に準拠したDBMSを提供することで,企業内のデータをしっかり格納できること,(2)モバイル機器や組み込み用途によって,遠隔地でデータを利用できること,(3)モバイル機器で入力したデータを企業のDBMSに反映するなど,DBMS間のデータ同期ができること,である。
初期の頃は健康/医療分野やERP(統合業務パッケージ)の顧客に向けてDBMSを提供してきたが,2000年に(米Sybaseから独立して)当社を創設して以来,データベースの適用範囲を広げてきた。モバイル端末向けソフトウエア企業の買収にも積極的に取り組んだのは,そのためである。買収した企業のうち,(1)コンテンツ配信用サーバーなどモバイル・コンテンツ管理ソフトを開発していた米AvantGo,(2)セキュリティ管理とデバイス管理のソフトウエアを持っていた米XcelleNet,そして(3)電子メールや個人情報管理といった分野に強い米Extended Systemsが主要な3社だ。
---最近のユーザーの需要の傾向と,iAnywhere Solutionsが提供する製品展開の狙いを教えて欲しい。Terry Stepien氏: ユーザーの需要としては,現在いくつか注目している分野がある。その1つがRFID(Radio Frequency Identification)だ。RFIDは将来,主要なビジネスに成長すると考えている。現在はICタグに含まれる情報の収集を手動で実施している企業が多いが,これを自動的に収集できるようにする需要がある。このための製品として「RFID Anywhere」を用意している。
もう1つ重要な領域として注目している分野が,モバイル端末とのメッセージング機能だ。欧米ではメッセージングの領域が今後も拡大路線にあると考えている。IM(Internet Message)を拡張し,ユーザー間でメッセージをやり取りするだけでなく,ユーザーと業務アプリケーションの間のメッセージ交換を担う。
メッセージングの例として,コール・センターの自動応答システムがある。自然言語処理機能を実装した製品「Answers Anywhere」とIMソフトを組み合わせて実現する。仏France Telecomの移動通信子会社であるOrangeでは,すでにパイロット事例として稼働している。こうした例を受け,Answers AnywhereとIMを組み合わせたパッケージ・ソフトとして2006年9月に「Information Anywhere Suite」を北米で出荷したばかりだ。
日本では,この11月に新製品を出荷する。ネットワークにつながっていないオフラインで企業のWebアプリケーションにアクセスするソフト「M-Business Anywhere」だ。ローカルに置いたRDBMSとWebフォームのキャッシュなどにより,あたかも企業システムに実際にアクセスしているかのようにWebベースのシステムを利用できる。
---今後の製品企画の戦略を教えて欲しい。Terry Stepien氏: 中核はMobile Enterpriseであり続ける。今後ますます,社員が社外に外出する機会が増えていく。外出している社員にデータベースの持ち出しや遠隔アクセス,データベースの同期といった機会を与える。どこにいても企業データにアクセスできるように,ネットワークにつながっていない場所でもデータを更新できるようにする。こうした基本的なビジョンにも,まだまだ機能拡張の余地は残っている。先述した,自然言語を用いたコンピュータによる自動応答処理などがその例だ。