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JR新宿駅に隣接した場所にあるJRバス関東の高速バス乗り場
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 JRバスグループは11月1日、同グループの高速バスチケット予約・販売システム「高速バスネット」を、全国で110社以上のバス会社が利用するシステム「発車オ~ライネット」に結合させた。2つのシステムの間で在庫の自動調整を可能にし、チケットが売れ残るリスクを低減させた。JRバスの高速バスは、各地域のバス会社と共同運行され、2つのシステムで併売されるものが少なくない。

 1台の高速バスが持つ座席数は、わずか30~40席。座席数の多い航空機や新幹線と比べて、1席当たりの売れ残りリスクが大きい。今回の取り組みには、リスクを減らして収益性を高める狙いがある。

 例えば、ある高速バスのチケットを高速バスネットと発車オ~ライネットの2システムを通じて10枚ずつ販売し始めたとする。発売日から何日か経過して片方のシステム上の在庫がゼロになったら、事前に指定しておいた比率で在庫を2つのシステムに自動的に再配分できる。

平成元年から続く高速バスブーム


JR新宿駅に隣接した場所にあるJRバス関東の高速バス乗り場
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 マイカーの普及や慢性的な渋滞によって、全国各地の市内を走る近距離の路線バスは利用者を減らし続けている。だが、高速道路を使う中長距離の高速バス市場は右肩上がりで拡大。高速バス大手のジェイアールバス関東(JRバス関東、東京・千代田)の高橋美明・営業部担当部長兼IT販売室長は、「平成元年くらいから夜行バスを中心に高速バスはブームになっている。最大の理由は安いこと。例えば東京・大阪間は、新幹線なら1万数千円だが、最近は4000円以下のバスもある」と説明する。日本バス協会の調査によると、2004年の高速バスの年間利用者数は8400万人強。市場規模は明らかではないが、1000億~2000億円と推察される。

 ただし現在では、全国のバス会社がこぞって高速バス市場に参入。さらに、旅行会社が貸し切りバスを使って主要都市間を結ぶ高速バス・サービスを安価に提供するケースが年々増えており、競争は激しくなる一方だ。そこでJRバスグループのように、IT(情報技術)活用によって収益性を高めたりサービスの使い勝手を向上させて、より多くの顧客を獲得しようとバス各社は模索している。  

 ところが小田急バスや京王電鉄バスなどの大手を除けば、予約・販売システムを自力で構築する体力を持つ高速バス運営会社は皆無に近い。このため、システム開発会社の工房(埼玉県戸田市)が運営する予約・販売システム「発車オ~ライネット」を100社以上が利用する状況となっている。

 実は、JRバスグループの「高速バスネット」も新しいシステム。JRバス関東が中心となって2003年10月から開発に着手し、稼働を始めたのは今年3月である。それまでは、JRバス各社はJR各社が運用する鉄道用の予約・販売システム「マルス」を間借りしていた。

 マルスでは何が不足だったのか。マルスはJR各社のためのシステムなので、JRバス各社のニーズに応じて柔軟に機能を追加しづらいのだ。例えば、マルスを利用するには基本的にJRの駅にある「みどりの窓口」に置いた専用端末が必要で、コンビニエンスストアやインターネットなど新たな販路への対応は容易ではない。また、運行日や運行便ごとに割引率や割引額、販売座席数、購入期日などを自由に設定することも難しかった。

リアルタイムで状況を把握し、車内販売を可能に

 JRバス関東は現在、高速バス業界特有の予約リスクを回避する施策の実現を目指している。前述の通り、高速バスは売れ残りリスクが大きい。つまり、当日キャンセルに対するリスクも、ほかの交通機関と比べると相対的に大きくなる。

 そこで思いついた対応策は、「ITを活用してリアルタイムで予約・販売状況を車内でも確認できるようにし、空いている席があればすぐ販売できるようにすることだ」(高橋IT販売室長)。これまでは運用面とシステム面の制約によって、バスが発車する2時間前までしか予約できなかった。2時間前に予約受付業務を締め切り、30分前までに紙で座席表を発行して乗務員へ配布する必要があったのだ。

 今後、高速バスネットシステムをさらに強化し、早ければ2007年1月にも乗務員に通信機能を備えた専用端末を持たせる。例えば無線LANを利用して、バスが停留所に着いたときに最新の座席表情報を端末に送信する。この仕組みが実現できれば、バスの発車直前だろうと、高速道路上にある各バス停に立ち寄ったときだろうと、空席さえあればいつでも車内でチケットを販売することができる。

 高速バス市場の競争が本格化し始めたのは2000年以降である。2000年2月の貸し切りバス事業の規制緩和によって、バス停を設置する必要のない旅行会社の高速バス・サービスが台頭。そして2002年2月、乗合バス事業に関する需給調整規制が緩和され、高速バス市場の競争がさらに激しくなったのである。「もはや、どの会社がどの路線に強いかといったエリア論は成り立たない。席をいかに効率良く売り、低価格かつ便利なサービスを提供できるかといった点で真剣に勝負するしかない」と高橋IT販売室長は気を引き締めている。