松下電器産業の大坪文雄社長は1月10日、2007年度からの新中期経営計画「GP3(ジー・ピー・スリー)」を発表した。その中で、2000年から2103億円かけて取り組んでいるIT革新全社プロジェクトについても言及。現在取り組んでいる中期計画「躍進21」における成果を総括するとともに、新中期経営計画ではモノづくり関連に積極的に投資することを表明した。
本誌(日経情報ストラテジー)の質問に対し、大坪社長は「IT革新全社プロジェクトは中村邦夫現会長が(社長職と)兼任して大変な勢いで進んできた。大まかな道筋は躍進21の段階でついている。(新中期計画では)開発から製販、知財関連に積極的に投資していきたい」と語った。
IT革新全社プロジェクトとは、2000年7月に中村現会長(当時社長)が本部長となって取り組んできた組織。開発、製造、販売、間接業務など、あらゆる体制をがらりと変えることを目指した大プロジェクトである。今年度までの6年間で2103億円の投資に対して、効果が2276億円と173億円上回っている。大坪社長も、昨年社長就任とともに本部長になった。
大坪社長は躍進21の成果として、「まだ十分ではない」としながらも、「世界中にある松下グループの製造会社や販売会社における販売や在庫の見通しがお互いに情報共有できるようになったこと」を挙げた。「こうした基本的な数字の裏付けがあって初めて、在庫削減や最小の運転資金で経営ができるようになる。今後、さらに進化させていきたい」と話した。
新中期経営計画では、IT投資の領域として、2007年4月付で設置するモノづくりイノベーション本部を支援することを挙げた。同本部はグローバルマーケティング部会など4部会からなる。14あるドメイン(事業会社)がそれぞれの分野で培った技術や管理手法を全社で共有する役割を目指す。
この活動に対してIT革新本部が、全世界を巻き込んだSCM(サプライチェーン・マネジメント)や、知的財産・ノウハウなどのデータベースを構築することなどで下支えしていく。「競争環境や培った技術が異なる多様な事業の集合体が、松下電器。ドメインを越えて、お互いにモノづくりの根幹にかかわる学びあえることはたくさんある」と大坪社長は狙いを説明する。「開発プロセスの効率化を図るために手法やIT投資を行ってきたが、まだ十分ではない。より強い知財力を目指すために、モノづくり立社の活動がうまく回るようにIT投資をしていきたい」と意気込む。