ソフトバンクモバイルは2007年1月25日、春商戦に向けた携帯電話の新製品を発表した。主力機種で20種類のカラーを用意するなど、女性ユーザーを中心に訴求を図る方針だ。2007年2月上旬から順次発売する(PDF形式の発表資料、製品情報)。
「1機種当たり3~4色展開が常識だが……」
今回発表したのは合計14機種。かねて開発意向表明済みの機種、発売済み機種の限定色モデル、内蔵のファームウエアのみが異なる派生機種などを除くと、実質10機種である。同社が主力製品と位置付けるシャープ製の「812SH」では、米パントン、伊藤忠ファッションシステムとライセンス契約を結び、パントンの色見本帳から20色を選び、きょう体の塗装に用いた。赤やピンク系統のカラーを多く用意したほか、光沢のある銀色や黒色、ベージュや茶色といった落ち着いた色調などをそろえた。多様な色展開により、主に若い女性を対象として訴求していく方針である。
「1機種当たり3~4色展開というのが携帯電話業界の常識だったが、世界で初めて20色展開する。個々のユーザーがライフスタイルや好みに合わせて、きょう体のカラーを選べるようにする」(ソフトバンクモバイル 代表執行役社長兼CEOの孫正義氏)。似たような試みとしては、パナソニック モバイルコミュニケーションズがNTTドコモ向けの複数の端末で、きょう体に「ジャケット」と呼ぶ別売りの装飾パネルを販売している。ユーザーが好みのジャケットを購入して付け外しすることで、きょう体のカラーやデザインの変更が可能になる。
製品発表の記者会見では、多数のモデルに加え女優の菊川怜さんと上戸彩さんを招き、ファッションショー風の演出で812SHを披露するなど、宣伝に力を入れていた。
ソフトバンクモバイルは2006年夏から秋にかけて、シャープ製の薄型端末「705SH」でも同様に女性ユーザーに向けて9色を展開。一時期は同製品が国内の携帯電話全機種の中で販売台数第1位になるなど人気を博した。これを受け、今回の812SHでも同様の販売戦略を採る。また、色数を増やすことで販売店に展示棚の拡充を促す狙いもある。とりわけ各社の携帯電話を取り扱う家電量販店において、NTTドコモやKDDIに比べ現状では小さい売り場面積を広げることを狙う。
ただし、色数が増えることで店頭における在庫管理の負担が増え、一部カラーのみ品切れになったり、販売不振で不良在庫を抱えたりといったリスクもある。このため、812SH発売後の端末流通・販売状況に注目が集まる。
厚さ8.4mmの世界最薄機種を発売
ソフトバンクモバイルがかねて注力している薄型端末の分野では、新たに韓国サムスン電子製の「708SC」を投入。708SCは折り畳まないストレート型で厚さ8.4mm、重さ73g。「第3世代携帯電話(3G)端末で世界最薄」(サムスン電子)としている。ストレート型の薄型端末に関しては、NTTドコモが厚さ9.9mmの「FOMA D703i」を2007年1月16日に発表したばかり(関連記事)だが、これをしのぐ製品となる。
また、製品発表の記者会見会場では、サムスン電子製の「805SC」のモックアップを公開した。ワンセグ受信機能を備えつつ、厚さ13.5mmと薄いことを特徴とする。同製品は「2007年春発売予定」で、詳細な発売時期は未定としているが、予定通り今春に発売されれば、スライド型としては国内最薄、かつ海外メーカー製の携帯電話として初のワンセグ受信機能付き端末となる見込み。
ワンセグ端末では、東芝製の「911T」を新たに発売する。ワンセグ受信機能に加え、下り最大3.6MbpsのHSDPA規格によるパケット通信機能を備え、厚さ17.9mmとしている。法人向けには、フィンランドのノキア製スマートフォン「X01NK/Nokia E61」と、シャープ製のカメラ非搭載端末「813SH for Biz」を投入する。
「SIMロック解除ができない理由は……」
発表会の質疑応答において孫氏は、端末に掛けられているSIMロックの問題についても触れた。SIMロックは携帯電話を特定の通信事業者との契約でのみ使用可能にする仕組みのこと。「重要な経営課題ではあるが、それなりの条件を整えてからでないとSIMロック解除は実現できない」との見解を示した。孫氏は、ソフトバンクの2006年度中間決算の席上、分割払いを完済した端末について、SIMロックを解除できないか検討する意向を示し、注目を集めていた(関連記事)。
孫氏がいう「それなりの条件」とは、販売奨励金(インセンティブ)制度の状況を改善することだ。「当社は2006年10月に端末の分割払いを始めるなど、インセンティブ制度からの脱却を進めている。しかし現時点では、まだインセンティブを上乗せしている。この状況で安易にSIMロックを解除できるようにしてしまうと、転売目的の業者が端末を安く購入して数日で解約し海外へ横流しする恐れがあり、経営が成り立たない」と説明した。
孫氏は、2007年1月に米サンフランシスコで開催された米アップルの展示会「Macworld Expo & Conference」を訪れ、アップルが開発した携帯電話「iPhone」などを視察した(関連記事)。この感想について尋ねられた孫氏は「非常にすばらしい製品だと思う」とだけ述べ、iPhoneの国内販売の意向についてはコメントを避けた。
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