東京ビッグサイトで開催中の展示会「NET&COM2007」で7日午後,「顧客満足度を高める経営革新」をテーマに,JR東日本の清野智社長とNTTデータの浜口友一社長が鼎談(ていだん)を行った。ナビゲーターはジャーナリストで明治大学教授の蟹瀬誠一氏が務めた。
JR東日本の清野智社長はまず,20年前の1987年に当時の国鉄からJR各社へ分割民営化された過去の歴史を紹介し,「公営企業だった時代は安全と技術を第一としていた。JRになってからはそれらに加え,“顧客の視点を意識した輸送サービスの開発”に積極的に取り組んできた」と述べた。
その代表例として運賃電子決済システムのSuicaの導入を挙げる。「2000年頃,10年ほど前に導入した自動改札機の更新時期に来ていたため,顧客へのサービス,セキュリティ,低コストを同時に実現するシステムについて検討を開始した」と清野氏は話す。
2001年にはソニーのFeliCaを採用した電子マネーのEdyがサービスを開始した。こうした市況を見ながらJR東日本では,ICカードを使った出改札システムの開発を進め,2001年11月にSuicaのサービスを開始した。2004年にはSuicaを使った電子マネーサービスもスタートし,コンビニやレストラン,ホテル,ガソリンスタンドなどへ利用範囲は拡大した。
サービス開発は試験的に導入してみてユーザーの使い方から学ぶ面も大きいとNTTデータの浜口社長は言う。「Suicaの前に,あるバス会社で運賃の電子決済システムを導入したところ,当初は若者の利用が多いと見込んでいたが,実際には高齢者からの反応がとてもいいのに驚いた。手先や目が弱くなっている高齢者にとって,小銭を扱わずに済むというメリットは思った以上に大きい」と浜口社長は語り,Suicaの成功に確信を深めたという。
2006年にはモバイルSuicaが登場したほか,クレジットカード機能を併せ持つViewSuicaカードなども開発し,ラインナップを拡充させている。同時に他の電子マネーサービス会社と一緒に読み取り端末(リーダ/ライタ)の標準化を進め,顧客にとっての使いやすいシステムの構築を急ぐ。「ITを活用することでサービスをさらに拡大し,Suicaを核とした電子マネーのビジネスモデルを確立したい」と清野社長は意気込む。