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写真1 イサム塗料の北村倍章 取締役(左)と、東京電機大学(TDU)総合メディアセンター企画・開発の橋本明人氏(右)
写真1 イサム塗料の北村倍章 取締役(左)と、東京電機大学(TDU)総合メディアセンター企画・開発の橋本明人氏(右)
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写真2 ファイザーの福崎巧CITソリューション&エンジニアリング部長(左)と、三井住友アセットマネジメント インフォメーションテクノロジーグループの松島士郎氏(右)
写真2 ファイザーの福崎巧CITソリューション&エンジニアリング部長(左)と、三井住友アセットマネジメント インフォメーションテクノロジーグループの松島士郎氏(右)
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 「仮想化技術に対して不安はあったが、使ってみると非常に便利。物理サーバーより安定しているくらいだ」、「目立ったトラブルはなし。運用保守にかける時間が減って、IT部員の時間を有効に使えるようになった」。これらは仮想化ソフト最大手のヴイエムウェアが開催したセミナーにおける、パネルディスカッションでの発言である。いずれも同社の仮想化ソフトを導入しているユーザー企業の声だ。

 その1社である中堅塗料メーカーのイサム塗料は2005年11月から、ヴイエムウェアの仮想化ソフト「ESX Server」の利用を開始した。2台のIAサーバー上でESX Serverを稼働させ、それぞれ8台と9台の「仮想サーバー」を構築・運用している。

 イサム塗料で情報システムを担当する北村倍章 取締役(写真1、左)は、仮想化ソフトを導入した理由を、「サーバーのハードウエアとソフトウエアの、リプレースのタイミングを分離させたかった」と語る。仮想化ソフトを使って、旧バージョンのOSやアプリケーションを使い続けながら、ハードウエアだけを高性能なものに入れ替えていく。こうすることで、「慣れたソフトを使い続けながら、当社の計画に合わせたタイミングで、ソフトをリプレースしていける」(同)。

残業・休出が減った

 北村取締役はまた、稼働中の仮想サーバーを物理サーバー間で移動させる技術「VMotion」の利点も述べた。同社ではVMotionを使って、システムを稼働させたまま仮想サーバーを移動させ、物理サーバー上のソフトを保守している。「ソフトをバージョンアップさせる以外、保守作業によるシステム停止はほとんど無くせた。就業時間内に保守作業が終わるため、残業や休日出勤も減らすことができた。サーバーが減ったため、リース期間が終了したときに出る産業廃棄物も減って、環境にもやさしい」(北村取締役)。

 「5年周期で機器をリプレースする本学にとって、5年後に標準となるであろうアーキテクチャを選んだ。それが仮想化技術だ」。こう語ったのは、東京電機大学(TDU)総合メディアセンター企画・開発の橋本明人氏である(写真1、右)。

 TDUでは、3拠点に分散した20台の物理サーバー(Sun UltraSPARC搭載機)を12台に集約。これらの上でESX Serverを稼働させて計80台の仮想マシンを構築し、メールやDNS、Webといったサーバー・ソフトやサービスを運用している。TDUでもVMotionを利用し、「積み木を寄せたり並べ替えたりするイメージで、仮想サーバーを再配置し、空いたサーバーを活用して別のサービスを稼働させたりしている」(橋本氏)。先進事例として、他の大学からもよく問い合わせを受けるという。

 製薬大手のファイザーは、サーバー台数と運用管理コストの削減を狙って、2005年9月に仮想化ソフトを導入。運用を開始した初年度だけで、1億円近くの運用コストを削減できた。

サーバー費用が7割減

 同社がITインフラに関して抱えていた悩みは、企業の買収を重ねてきたことによる、サーバー台数の増加。物理的なハードが増えれば、当然ながら故障個所も増えるし、維持費もかさむ。

 同社はESX Server1台当たり、物理サーバー12~13台を統合していく。現在、220台の物理サーバーの過半数が移行済みである。約1億円のコスト削減効果は、不要になった物理サーバーの保守契約を解除したり、固定資産の除却や廃棄を進めた結果である。

 このほかにも、1.5時間かかったOSのインストール時間を10分に短縮できるなどの効果が上がっているという。今後はサーバーの整備・統合とともに、世界の他地域へのアプリケーション・ホスティングや、BCP(事業継続計画)の策定などを進めるという。「仮想化ソフトによって、物理的なサーバー構成にとらわれて“思考停止”することなく、様々なサービスを提供できるインフラの実現を目指したい」(福崎巧CITソリューション&エンジニアリング部長、写真2左)。

 BCP策定の一環として仮想化ソフトを導入したのが、三井住友アセットマネジメントである。同社は33台の物理サーバーを、9枚のサーバー・ブレードを搭載したブレード・サーバー1台に集約。これと別に、災害対策用サーバーとして、物理サーバー8台の上に仮想サーバー22台を構築。2007年2月に、これらのブレード・サーバーをデータセンターに移した。

 仮想化ソフトを採用した理由は、サーバーの設置スペースを少なくしてデータセンターの利用料金を圧縮するためだ。「多数のサーバーをクラスタ接続する方式も検討したが、サーバーの資源を有効活用も考えて、仮想化ソフトを採用した。サーバーの導入にかかる一時費用は、従来に比べて6~7割は減った」(同社インフォメーションテクノロジーグループの松島士郎氏、写真2右)。

 各社は、おおむね期待通りの成果が得られていると口をそろえた。仮想化ソフトは徐々に浸透しつつあると言える。とは言え、まだこれらは少数の先進事例。より多数の企業が導入して利点を実感するためには、仮想化ソフト自体の成熟や、利点や難点も含めた普及啓蒙が進む必要があるだろう。