マイクロソフトは2007年3月5日、同日付で代表執行役兼COO(最高執行責任者)に樋口泰行氏が就任したことを正式に発表、ダレン・ヒューストン社長と二人三脚で同社の経営に当たることを表明した。ヒューストン社長は一般消費者向けビジネスに専念し、法人/公共機関向けビジネスを樋口氏が担当するという。なお、一部に年内にもヒューストン氏に代わり樋口氏が社長に就任するとの報道があったが、ヒューストン氏は来年度も社長職にとどまる意向を示し、社長交代を否定。ただ「樋口氏はCEO(最高経営責任者)レベルでの経験もあるので、ゆくゆくはマイクロソフトのCEOになることもあり得る。それも含めてのCOO就任だ」(ヒューストン社長)と説明した。
樋口氏は、1980年に松下電器産業に入社。その後米国に留学し、1991年にハーバード大学経営大学院を卒業した。ボストンコンサルティンググループ、アップルコンピュータを経て、旧コンパックコンピュータに入社。2003年には、45歳で日本ヒューレット・パッカードの社長に就任した。2005年からはダイエーの社長を務め、経営再建を指揮。2006年10月に社長を退任、12月まで同社の顧問を務めていた。
樋口氏は、以前から面識があったというヒューストン氏と2006年末に面会。2007年に入ってからは米マイクロソフト本社を訪問してスティーブ・バルマーCEOなどにも会った。そして「これだけ成功している企業なのに全く慢心していない。むしろ危機感すら抱いている」(樋口氏)という経営陣の姿勢に魅力を感じたという。また同社がオープン化の波に乗り、パソコンのみならずITインフラ、モバイル、家電など多岐にわたる分野で成果を上げていることも評価する。
マイクロソフトで目指すのは「会社としての“人間力”を高めること」(樋口氏)。製品やサービスのみならず、営業やエンジニアリング、サポート体制などに対して信頼を得なければビジネスは成り立たない。マイクロソフトは顔が見えにくい、などと言われることもあるが「マイクロソフトの社員とは話ができる、マイクロソフトが好きだ、一緒に仕事をしたい、と思ってもらえる会社にしていくことが、ビジネスの成功にもつながる」(樋口氏)。自身が技術者出身であり、さらにハードウエアベンダー、システムインテグレーター、ユーザー企業とさまざまな立場を経験してきたことが役に立つのではないかと述べた。またマイクロソフトは一般消費者向けのボリューム(量)のビジネスで発展してきたが、法人向けビジネスではまた別の姿勢が求められるため、過去の成功体験を引きずらずに法人分野を伸ばしていきたいとの考えも示した。
ヒューストン社長は、「樋口氏の経験や倫理観、リーダーシップ能力に強い感銘を受けた」と、樋口氏に入社を依頼した理由を説明。また同時に、「マイクロソフト日本法人には新しいリーダーが必要だった。米国に次いで2番目に大きな市場である日本を、1人のリーダーが率いていくことはとても大変だった」(ヒューストン社長)との事情も明らかにした。樋口氏には、いまだ根強い「“デスクトップOSの企業”というマイクロソフトへの先入観を取り除いてほしい」(ヒューストン社長)とし、エンタープライズ分野での同社のさらなるビジネス拡大を期待している。