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 残るは、実践的な教育カリキュラムの作成と教員の充実---。

 情報処理学会・情報処理教育委員会は、大学における情報技術教育のカリキュラム作成プロジェクト「J07」において、最も重要な「BOK(ボディ・オブ・ナレッジ)」を策定、説明会を開催した。J07は、大学のIT関連学部・学科で教育すべき項目を規定するもの。

 今回は、情報技術分野を、CS(コンピュータサイエンス)、CE(コンピュータエンジニアリング)、SE(ソフトウエアエンジニアリング)、IS(インフォメーションシステム)、IT(インフォメーションテクノロジ)という5領域に分け、それぞれを構成する中核(コア)項目や選択項目を確定した。J07が大学教育の現場で活用される2008年度以降、教育内容は大きく変わることになる。
 
 それぞれどんなものか、ざっと見ていこう(詳細は情報処理学会のサイトを参照)。まず、CSは情報処理とコンピュータに関する基本的な事柄を網羅したもの。情報基礎、プログラミング、アルゴリズム、OS、ソフトウエア工学基礎などをコア領域とする。

 CEは、これまでコンピュータそのものの学問/技術を扱うという位置づけだったが、J07ではコンピュータおよびコンピュータ応用機器という色彩を強めた。このため、コア項目に低電力コンピューティングや組み込み用アーキテクチャ、選択項目にマイクロコントローラやセンサ技術を入れている。

 SEは、離散数学やネットワーク基礎など情報科学の基礎と、ソフトウェアモデリングやアーキテクチャ、ソフトウエア構築、品質とエコノミクスなどソフトウエア工学で構成する。策定の幹事役を務めた西康晴・電気通信大学講師は「エンジニアリングは科学ではなく、工学。そこでソフトウエアライフサイクル全体を網羅し、品質やコスト、チーム力なども考慮した実践的な知識項目にした」という。

 ISは「組織のニーズを満たす業務プロセスに焦点を当て、情報技術を用いて組織の目標を効果的かつ効率的に達成できる人材」(リーダー役の神沼靖子情報処理学会フェロー)を育成する学問領域。情報技術の基礎、組織や管理、情報システムの仕様/設計/実装/運用などから、関連法律なども含め合計1000強の知識項目を抽出した。

 最後のITは新しい学問領域。カバー範囲は「企業などの組織におけるIT基盤の構築・維持に必要な知識全般。具体的には情報ネットワーク、Web技術、セキュリティ、プラットフォーム、運用管理などだ」(策定に当たった駒谷昇一筑波大学教授)。SOA(サービス指向アーキテクチャ)やBCP(ビジネス継続計画)も、ここに入る。

 今回発表されたJ07のBOKは、まだ暫定版と言えるもの。2007年度に学会を中心に産業界などから意見を求めて、BOKをリファイン。並行して、BOKに基づいて授業設計をしやすくする科目設定を例示。早ければ2008年度から大学における授業に活用される予定だ。

 一方で、2008年度には最新技術も網羅した次世代カリキュラム、「J1×」の策定に着手する。全体のとりまとめ役であり、情報処理教育委員会の委員長を務める筧捷彦早稲田大学教授は「大学教育において、BOKやカリキュラムの策定は重要。J07では、経団連の提言やスキル標準などを念頭に置きつつ、米国の大学向けカリキュラムであるCC2001との整合性を確保し、さらに日本の大学が実際の授業で取り入れられるものにした」と話している。