「個人向けパソコン市場において、業界としてWindows Vistaの発売に若干の期待感はあったが、発売後の動きは若干鈍いと思う――」。電子情報技術産業協会(JEITA)の会長を務める秋草直之氏(富士通 代表取締役会長)は、2007年1月30日のWindows Vista発売後のパソコン市場についてこう語り、業界全体として春商戦の出荷実績が厳しいとの見方を示した。3月22日の定例会見で明らかにした。
足元の景況感について秋草氏は、「デジタル家電の出荷実績は2006年12月が対前年同期比4%増、2007年1月が同5%増と引き続き好調で、日本経済の景気回復をけん引している。特に薄型テレビが強い」としたが、パソコンはこうしたデジタル家電の出荷拡大の波に乗り切れていないとの見通しを示した。
1月30日のWindows Vista発売に合わせ、パソコンメーカー各社は春商戦向けのパソコン新製品を一斉投入。主要都市の家電量販店を中心に深夜販売や発売記念イベントなどを展開していたが、局所的な盛り上がりにとどまったもよう。「以前は、Windows発売に合わせ多数のユーザーが秋葉原などに群がり一大ショーとなっていたが、今回は発売と同時に新OSや新機種を購入するのではなく、個々のユーザーが自分のペースで買うようになった」と分析する。
一方で、「短期間の急激な増産でなく、出荷台数が少しずつ増えていく形になったことは健全な姿になったと言えるし、パソコンが家庭に浸透してきたことの表れとも言える」とも語り、Windows Vistaの初動の鈍さが国内パソコン産業の低迷を意味するものではないと強調した。
中長期的な見通しについては、「出荷台数が横ばい、製品単価が下落というトレンドは、電子産業全体の宿命でありパソコンに限った話ではない。それよりも、ウインテル(Wintel)主導によるプロダクトアウトの現状に対して、これで良いのかと思う。欧州では当局による制裁措置も発動されている一方、日本では割と現状に従っている。今後は、サードパーティー製ソフトウエア、システム構築、サポートなども含め市場のバランスを取っていく必要があるだろう」との考えを示した。