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松下電器産業のCIOを務める牧田孝衞役員
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 松下電器産業の情報システム担当の牧田孝衞役員が22日、「IT Trend 2007」において、ITを活用した経営革新の極意を語った。

 牧田役員は、同社のCIO(最高情報責任者)で、2000年からの6年間で2133億円を投じた「IT革新全社プロジェクト」の実質的な責任者。このプロジェクトは、中村邦夫社長(当時、現会長)が社長就任から1カ月後の2000年7月に始動。開発や製造、販売、間接業務など、あらゆる組織を、市場の変化に即座に対応できる体制にすることを目指してきた。中村社長自らが本部長となって取り組んできた肝入りの改革である。

 牧田役員によると、昨年度までの5年間で1745億円の投資に対して、在庫削減などの効果が1783億円と既に「黒字化」を達成。2006年度までに2133億円を投資するが、これを120億円上回る成果(2253億円)の見通しが立っているという。

 講演では、2253億円の成果のうち、象徴的な事例をいくつか紹介した。その1つが、2004年6月から取り組んでいるプラズマテレビなどの世界同時発売の支援である。他社より早く市場へ新製品を投入し、値崩れが起こる前に売り切る体制をグローバルで構築するものだ。

 具体的には、発売日から逆算してプロモーションを展開して顧客に知らせ、需要に対して潤沢に商品を用意できる体制を構築してきた。「DPIM」と呼ぶ開発手法を採用し、発売日程を順守させる仕組みを採用。商品企画から生産、発売までにかかる期間を短縮するなど業務プロセスを見直してきた。商品企画から発売までの期間が42%減、調達で70%減などの成果を上げた。

 こうした成果を生み出すために重視してきたのが、投資判断する経営幹部への教育である。2004年度から経営幹部セミナーを実施。中村社長自らが登壇してIT革新全社プロジェクトに対する思いや考えを直接伝えるなど、1泊2日かけてプロジェクトへの理解を深めてもらう取り組みをしてきた。

 既に投資額を上回る成果を出しているが、牧田役員は課題も残ると話す。その1つが、成果が出せるプロジェクト・マネジメントの定着化である。これまで多くのプロジェクトが進められているが、なかには成果が生み出せなかった失敗事例もあると明かす。

 牧田役員は過去の戒めをこめて、失敗事例の原因を「悪魔のループ」と呼んでいる。経営戦略とプロジェクトの方向性が一体となっていないがために、業務改革が置き去りとなって単なるシステム構築になってしまうことが要因だった。そのため、いざシステムを導入しても、業務とかい離してしまい、評価段階になっても投資効果が見込めないものもあったという。

 こうした悪魔のループから脱却するために、構想や設計、開発など各段階で経営幹部をはじめ、関係者全員が課題を共有できるように「DCP(デシジョン・チェック・ポイント)」とよぶ場を設定するなど、プロジェクトの進め方の標準化を進めてきた。

 さらに、現在取り組み中のテーマについても触れた。それが「経営ITアーキテクチャ(CITA)」とよぶ松下版のEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)である。松下グループで全体最適化が図れるように、業務プロセスをグループで統一するなど体系的に情報基盤を再構築している。既にCSR(企業の社会的責任)対応などつの6領域で57プロセスの標準化を決めた。既に全体の3分の1に相当するという。

 最後にIT革新プロジェクトを強化するために、経営成果を定量的に評価できる仕組みが必要だと訴えた。経営幹部が、IT投資に対する成果を実感できることによって、さらなる投資に取り組めるからだ。「IT革新プロジェクトの活動に終わりはない。IT革新なくして経営革新できないことを肝に銘じてこれからも取り組んでいきたい」と講演を締めくくった。