「純粋なSOA(サービス指向アーキテクチャ)だけでは,業務が期待通りに動いているかどうかを知ることはできない。イベント駆動処理をSOAに組み合わせる必要がある。この認識が共有されるようになってきた」---。ガートナージャパンの飯島公彦氏は2007年4月10日,ソニックソフトウェアが開催したユーザー向けセミナーで講演。SOAとイベント処理を組み合わせたCEP(Complex Event Processing,複合イベント処理)の必要性を説いた。
ガートナーが2006年5月に実施した企業調査では,ユーザーがSOAに期待していることは,第1位が「ビジネス・プロセスの可視化」で55.8%である。これには,SOAのための業務設計の結果として業務プロセスの定義が明確になる,という意味もあるが,コンプライアンスの観点から「業務プロセスの監視/管理によるSLM(Service Level Management)を実現したい」という意味を含んでいるという。例えば「企業間取引において,受注してから1時間以内に出荷する」という業務要件を満たしているかどうかが分かるようにする,という意味だ。
「従来,純粋なSOA,すなわちSOA 1.0では,クライアントが明示的にサーバーを指定して通信する必要があった」と飯島氏は指摘する。純粋なSOAはサービスを利用するためのインタフェースを規定しているだけに過ぎず,サーバーはクライアントからの要求に答えるだけだった。こうした純粋なSOAでは,ユーザー企業の期待が大きい,業務プロセスの監視/管理という目的は達成できない。
これは,SOAとイベント処理を併用する,すなわち,イベントの発生をトリガーとするワークフローを実装することで可能になる。SOAの世界の用語で表現すれば,BAM(Business Activity Monitoring)を実現するのはCEP(Complex Event Processing,複合イベント処理)というわけだ。
ユーザー調査によるSOAへの期待の第2位は,49.5%を獲得して「業務変更への柔軟な対応」が食い込んだ。背景として,企業買収などが突発的に起こったり,日本企業が海外に進出する際に国別の事情に業務を合わせるといった需要があると飯島氏は指摘する。
こうした期待の裏づけとなるのが,同時に実施した別の調査の結果である。それによると,SOAを活用するための重要な前提要件として,「業務のモデリング」と「ビジネス・プロセス設計」が,それぞれ56.5%と53.3%でトップ2となった。コンポーネントをただ組み合わせるだけでは業務プロセスは完成することはなく,業務の目線でシステムを作っていく必要がある,ということである。これは,情報システム部門の役割が変わってきていることを示していると飯島氏は言う。
ただし,業務のモデリングは一筋縄ではいかない。2007年現在,特に期待の大きかった企業はSOAに対して「幻滅期に入っている」と飯島氏は分析する。SOAに対する過度な期待は2005年から2006年にかけてピークに達し,現在は急速にSOAへの期待感が薄れていっている状態という。
このまま推移すれば,2009年から2010年にかけて,SOAの効果を感じることなくSOAをやめてしまう企業と,SOAで成功する企業が2極化する。「テクノロジの議論ではなく構造の議論を今のうちにしっかりやっておき,グランド・デザインを描いた企業が成功する」(飯島氏)。